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2007年5月 7日

生鮮を売るには特別なノウハウが必要だ

駅から自宅に帰る途中に、生鮮コンビニ99円ショップとスリーエフの生鮮コンビニがある。この二つは雰囲気が違う。八百屋さんが生鮮コンビニをやっている、これが99円ショップで、売りが強いだけでなく、「俺にはこれしかない」という気構えが店長にはある。一方、スリーエフの生鮮コンビニは大学を出たばかりの社員と思しき男性2名、女性2名の計4名で店を回しているようだ。こちらは何もわからないから一所懸命やっているものの、サラリーマンがやっており、肝心な生鮮品はあまり売れていない。売れているのは加工食品ばかりで、ナショナルブランドのペットボトルを100円で売っているからとドラックストアで買ってわざわざ運ぶよりも、ここで買えばあまり重くはない。そういう買い方を近所の人はしているようだ。僕はローソンの生鮮コンビニは見たことがないから、なぜ99円ショップと業務提携するのかは想像にしか過ぎないのだが、「99円ショップは生鮮食料品とは言っても本当に生鮮の野菜を中心にしたショップで、この“腐るもの”を売り切ってしまうのは、やはりオーナーのような気分の人にしかできないだろうな。ここに惚れ込んだのだろう」と勝手に想像している。

渥美俊一氏は日本の小売流通の権威であるが、集大成の格好でまとめられた『流通革命の真実』という本の中で、水産売場は100%赤字、惣菜売場は80%赤字、青果売場は70%赤字とおっしゃっている。ここの個所を読んだときに、生鮮食料品の売り方というのは本当に難しいと思った。例えば魚にすると、冷凍ものでなく生で、しかも近海ものとなると、いつも同じものばかりというわけにはいかないし、品揃えも日本型スーパーストアやスーパーマーケットでは一定なければならないし、そのうち鮮度は落ちてくるだろうし、見切りは必要だし、これはなかなか大変だ。惣菜売場も同じで、ただ作っておけばいいというものではない。青果売場もあれだけ品揃えをしているから儲けが出ているのか、この本を読んでから4月末、5月と各所研修のつもりで見てまわったが、午後8時過ぎてもまだ品物が豊富にある。きっと夕方に売れてしまって品出ししたのではないだろうか。オランダに行くとアムステルダムのダム広場のすぐそばに宿をとるが、そこにあるアルバートヘインは午後6時過ぎから売切れになったものが目立ちはじめる。夕食後、お酒でも買おうと立ち寄ると、もう売れ残った物や、加工食品しかない。

もう10年も前になるが、日本型スーパーストアやスーパーマーケットの社長さんが僕のところへ度々お越しになっていた時期があった。2000年になってからもういらっしゃらないのだが、自社で花売場を運営することをやめて、特定企業に任せたり、売場貸しをしたりして、とりあえず自社で花を売ることは断念なさった。もちろんこの2つの業態でも自社でなさっているところもある。自社の花売場を完成させたのは、なんといってもホームセンターのジョイフル本田殿である。ここの花売場は素晴らしい。他のホームセンターは羨望の目でジョイフルさんの花売場(切花・鉢物売場)を見ている。花の鮮度は魚と一緒だ。切花なんか刺身を売るようなものだ。こうなると独特のノウハウが必要であることがわかる。

90年代初め、バブルが崩壊し、個人消費向けの専門店が増えていった。95年から日本型スーパーストアが、次いでスーパーマーケットが、最後にホームセンターが切花・鉢物の売場を拡張した。拡張すると同時に、専門店が支店をたたみ、出費を少なくさせようと本店重視の家族経営になって、切花・鉢物の売場面積を縮小した。そして、ホームセンターは面積割売上高が期待したほどでもないので、花売場を縮小してきた。また、日本型スーパーストアやスーパーマーケットが花売場を外部委託化し、売上が未達の店では物日以外は花を置かないことにした。こうやって花売場の面積は縮小し、卸売市場協会ベースの花の取扱金額はわずかだが少なくなった。繰り返すが、花は近海そのものの魚と同じなので売り方に特別のノウハウが必要だ。そして売り切る人材が必要だ。それは専門店にしか期待できないところである。

投稿者 磯村信夫 : 2007年5月 7日 00:00

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