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2009年11月 9日

デフレ下での存続法

世界の三大花の消費地、日本、ヨーロッパ、北アメリカで今日切花相場の下がっていないのはトルコギキョウの八重とシャクヤクだけではないだろうかとの意見で、三極に住む花の事情通の意見が一致した。今年のオランダのFORTI FAIRは昨年の3分の2の人出であった。同時開催のアールスメールの展示会は例年並ということだったが、8月末に開催されたモスクワの花の展示会が3分の2であったことを思うと、景気動向からオランダのHORTI FAIRはまあまあの人出であったのではないか。

今週の週中、国際フラワーEXPOとガーデンEXPOが幕張で行われる。弊社グループでは関連会社が新しい考え方や新しい商品を紹介する予定だ。ぜひともお立ち寄りいただければと思う。弊社大田花き本体としては、個人消費の開拓にポイントを絞って素材開発やリテールサポートを行っている。基本に忠実に、当たり前のことを当たり前にやるのが取引所運営会社であり、花の卸売会社であるから、大田花きの活動はあえて展示しない。出会いの場そのものを大田市場で持っている大田花きはB2Bの展示会で新たな出会いの場を作らなくてもよいのではないかと考えている。


さて、花の単価が下がり、デフレが本格化してきている。そして2015年まで続くと考えている。世界単一マーケットで今まで高かった日本の物価と賃金の調整が本格化してきたと判断している。生産者の皆様方は生産資材が値上がりし、売る単価は安くなってきているので今後の見通しが立たないと言う方も多いと思う。原因と解決策は次のようだ。

ベルリンの壁が崩壊して20年、世界は単一マーケットになった。文明にはフローの資源を利用する文明と、ストックの資源を利用する文明とがある。せいぜい馬車で移動するフロー資源利用文明のときは地球は耐えられる。しかし地下資源をエネルギー源として使うストック利用文明はどうだろうか。日本が明治維新で化石燃料を使う文明に入ったとき、世界の人口は15億。日本の人口は3千万人。ストックの資源を使っていた先進国といわれる国の人口は4億5千万人。だから地球はまだ耐えられた。だが現在、ストックを使っている文明で15億人、地球の人口は60億人。BRICsの中でアジアの同胞であるインドと中国だけでも25億人の人々がストックの資源を利用する文明に入った。こうなると石油だけでなく、農業資材が値上がりする。しかしこの人たちの人件費、農地の価格などを考えると、彼らは輸出を考えたとき競争力はあると言わざるを得ない。韓国や台湾からの花を見ていても競争力はあるのだ。だが地球は保たない。新しい発展の仕方、暮らし方、価値基準を持たなければならない。日本は25%CO2を削減するのだ。このような状況の中で日本の生産者が受け入れられるためには、日本人の価値基準に合った新しい花をどこよりも早く作出し、MPSやEUREP GAPなど世界でトップクラスの地球に優しい農業と鮮度管理を徹底している旨をアピールする必要がある。カーボンフットプリントもそのうちの一つである。

これらの消費者価値に適合した生産流通は、一軒の農家や一軒の小売店がやりきれるだろうか。時間や問題意識、資金問題などあるだろうから、どうすれば一段階上がったサービスを提供できるかが今問題になっているのだ。

今後、先進国では更に付加価値をつけた商品を消費者に楽しんでもらう競争になってくる。価値あるサービスをやりきれるかどうかに日本の花作りの存続のポイントがある。今やらなければならないのはまず意識改革で、規模の大小に関わらず、一つ一つ消費者価値を高め、デフレ下でも価値ある花に相応しい代金で買ってもらえるよう生産流通技術を革新し、それをPRして行こうではないか。世界で花の生産は微減だ。日本の小売店と消費者は必ずやりきれる。

投稿者 磯村信夫 : 2009年11月 9日 00:00

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