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2011年2月28日

一輪菊ルネッサンスの年と位置づけたい

見通しなのでエコノミストが言う景気動向のように、当たるも八卦当たらぬも八卦と思いながらお読みいただきたい。今日は日本の一輪菊、特に白菊において、多様化を促す波が来ているということをお伝えしたい。

秋菊を電照したり、シェードしたりすることによって、通年で同じ品種が作れるようになって早30年あまり。秋菊だと夏は暑いので、実際は2品種作っている。一輪菊といえば仕事用の白菊に特化した年間2品種の絞込み生産が正解とはどうも言えなくなりつつあるのだ。何故なのか?混乱をきたさないように整理整頓しながらお話しよう。

一、葬祭用の白一輪菊は国内の優良産地の菊がこれからも使われ続けると思われる。
二、葬儀の祭壇は花祭壇になっている。団塊の世代が喪主の中心世代となり、季節の花を中心にした祭壇が多くなって、一輪菊の白の使われ方は、首都圏では量的にピークのときの1/3を下回ることになっている。
三、供花は芳名版にて済まし、花祭壇を供花としていて、篭花を出さないことが通例化してきた。よってカトレアの相場が下がっている。
四、中国系の人々は今まで白菊をあまり使わず、菊と言えばほとんど黄色であった。韓国も同様であるが、日本への輸出向けに作った神馬も相場の兼ね合いで輸出できないこともある。そうなると当然地元に出回るわけで、出回って早10年以上が経って、韓国、中国、台湾、東南アジアなどでもすっかり白菊消費が現地で定着した。「神馬」を作っておけば日本以外でも売れるので、海外の菊産地は面積を拡大することとなった。このことは輸入品の白菊のウエイトが高まっていくことを意味する。
五、スタンダードタイプの花として、一輪菊は東欧圏で人気である。ロシアはお弔いにカーネーションを使う。蕾の大きい一輪のバラと一輪菊は大変な人気である。一本の茎に大きな花は世界の売れ筋で、ジンジャやアジサイなどもそれに入る。世界ではもう一度、一輪菊に注目が集まり、スプレーギク同様、一輪菊も品種が多様化してきた。ヨーロッパでは団塊ジュニアといわれる第二期ベビーブーマーたちが消費を引っ張っている。ピンポン菊をはじめとした一輪菊の人気はすっかり定着し、今後とも新品種が待ち望まれている。そのトレンドがオランダから世界へ飛び火している。

以上が一輪菊を取り巻く消費環境、販売環境である。日本はJA愛知みなみの輪菊部会とJAふくおか八女電照菊部会の2つの軸を中心に、仕事花の菊を過不足なく安定供給している。一輪菊における輸入の比率は輸入10%、国産90%であったが、上記の理由から輸入比率が15%になる可能性が高い。
スプレー菊の場合、多方面に使われているので、国産は主にマレーシア産と競争しながらも棲み分けてきている。しかし一輪菊は葬儀の仕事用、そしてお彼岸や盆などの仏花に特定される。もっといろいろな場面で一輪菊を使ってほしいと思ってきたが、実際の消費拡大施策は十分なものだとは言えなかった。一年間、菊類が高かった2010年、それゆえ海外の業者は日本に向けて一輪菊を作りこんでいる。ここに用途が限定しているがゆえに、単価が下がっていくリスクがある。
言葉は適切ではないかもしれないが、「災い転じて福となす」のように、ご年配の方だけではなく若い人たちにも一輪菊の素晴らしさをわかってもらえるよう一輪菊の用途の拡大、それに合った品種の変更を行ってほしいと考えている。日本には素晴らしい品種がある。民間の育種家として名高い方々が多くいらっしゃる。普及所、試験所もJAなどの生産者を応援する部隊も世界一流だ。消費者のライフスタイルを意識した生産と需要の掘り起こしのための革新を2011年はお願いしたいと考えている。

投稿者 磯村信夫 : 2011年2月28日 00:00

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