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2014年9月 1日

輸入花は増えそうにない

 新学期の9月に入り、ススキがたくさん出荷されるようになってきた。待ちに待っていた秋だ。今年は9月8日がお月見で、9日が重陽の節句、翌週が敬老の日と、いよいよ本格的な需要期になってきた。8月の盆と同様、小菊・菊の前進開花で菊生産者共々、市場は頭を抱えている。西日本はもちろんのこと、高冷地の産地は日射量が足りず、秋菊は日長で開花するから早く咲いてしまうのはやむを得ない。どういう風に上手に使ってもらうか。定温庫があり、しっかりとした処理が出来る業者の人に、前から仕入れてもらえるようお願いをしている所である。菊類はそういうわけだが、2月の2回の大雪で被災し、ハウスの再建をしようとしている産地は、まだ生産は軌道に乗らない。そうなると、主にカーネーション、ユリ、トルコキキョウ、バラやスプレー菊等の主要品目が不足することになる。

 輸入品が少ないのは、1ドル80円の時代からすると円安で、3割もコストが上がり、輸入花の単価が横ばいなので、採算が合いにくいからだろうと思っていた。しかし、それも一因だが、実態はもっと根源的なものであった。先月、安倍総理は外遊でコロンビアを訪問した。コロンビアは政治的にも安定してきており、経済成長が著しい。首都ボゴタ周辺のカーネーションの面積はピークの3分の1になっている。それは、一次産業以外での経済成長が著しいためである。お隣のヒペリカムやバラの産地であるエクアドルも、花の生産面積はピークの半分になっている。アフリカのケニアでも、ヨーロッパ資本や、ヨーロッパ人が大農場をつくっていたが、どんどん現地化してきている。この地球で貧しい国があり、そこで花をつくってもらい、日本に輸入して販売する。その差益を輸入商社の方が得る。こういう時代ではなくなってきているということだ。一国の中で、貧しい人と富める人がいる。その比率の差はあるものの、世界中同じように経済的に発展しつつある。そうなると、日本に輸出してくれる国で増えていく可能性が高いのは花き生産の適地があるベトナムだけになってしまう。国内で今後とも花き生産量が減らない、増えていく可能性があるのは沖縄県、長崎県、そして秋田県である。また、道州制のエリアで見た時、地域で果樹をつくっている産地に花きが導入されると、新しい産地になってゆく。

 海外の産地に目をやって、ベトナムが増える可能性があるといっても、一朝一夕に質の高い菊やカーネーション、トルコキキョウ、バラをつくれるというわけではない。ここベトナムでも経済的に伸びていった時、いつまで農業に人手が回ってくるのか疑問でもある。もう一度、新しく出来た日本花輸出入協会の方たちと、国内需要を満たし、消費を拡大する為、実際に検討を重ね、卸売市場は協業する必要がある。実際、スプレー菊やカーネーションは、高品質の物を輸入商社の方々が市場に出荷することにより、市場の中では国産と輸入品が激しく競合したことは事実だ。しかし、買参人や消費者からすれば、競争の中でますます良くなるスプレー菊やカーネーションを見て、欲しいと思い、消費が拡大しているのだ。日本の消費者の懐は深くて広い。国産も輸入品も、消費者は良いものを待ち望んでいるのである。しかし、当面の間、輸入花の増加も厳しいものがある。

投稿者 磯村信夫 : 2014年9月 1日 14:02

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