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2014年9月22日

生産減と運賃高で側道の流通

 本日のセリで最初に売った一輪菊の中に、葉っぱを見なければダリアと見間違えるかのようなものがあった。菊類の生産は、日本の切花の三分の一もある最も重要な品目だが、仏様の花に向かい過ぎており、現在改革が叫ばれている。団塊ジュニアが好みをリードする消費社会において彼らに菊を買ってもらうべく、多彩な花形や、仏花であれば、値ごろ感を訴えることが出来るもの等、育種から生産販売に至るまで、「ここ3年で菊も変わったなぁ」と言ってもらえるよう構造改革を行っていきたい。

 さて、このお彼岸においてもだが、切り花、鉢物とも花きの出荷量は増えない。それどころか、まだ1、2年は減る。減らさないように花き振興法にのっとった販売や生産を頑張るが、しかし、円安基調も手伝って出荷量は減るだろう。果菜類や軟弱野菜で元気な青果物も、煮物や漬物等を食べることが少なくなって、トータルの消費量は減っている。先進国では、農家戸数は全体の1%が平均値であるにもかかわらず、日本は3%あるのだが、高齢化で今後とも減っていく。そして、軒数は少なくなっても規模拡大を図ろうとはしているものの、減少に歯止めがかからない。食生活は絶えず変化し、そのスピードは今年の新米価格の低迷が示す通り、思いのほか早い。日本列島のように縦長の国は、果菜類、軟弱野菜、花き、特産の果物と畜産。この5品目を中心に農業の展開を図っていくべきである。その方向に日本農業は舵を取り、本来の農協の役割である生産部会は真実の組織なので、そこを中心に大規模化した法人と共に農業をやっていく。農業者と農協が自信を持ってその方向に行くまで、しばし、花の生産は減る。

 明るい未来が見えているから、全農県本部や農協は出荷先を限定する。自分たちの未来がどうあるべきかを産地は理解しているので、地政学的に異なった役割の卸売市場で、財務体質は無論のこと、理念を共有する市場に出荷先を絞る。このように市場集約をしている中において、運賃の高騰や運転手不足の話が持ち上がってきたのが今年の冬からであった。系統機関も、どこの卸売市場会社との取引が具体的にいくら利益をもたらしているか、個別の取引先ごとに年度ごとの損益を把握しているし、個別に販売目標を立てている。これは卸売会社も同様で、出荷者だけでなく、販売者ごとに個別の取引収支を出しているのは、経営上当たり前のことだろう。そうなると、距離によって運賃が違うことが明確になってくる。出荷量も増えないどころか減少気味だ。では、どうしたらいいのか。産地は今までその地域に出荷してきた。急にやめるとなると、消費者にも販売店にも迷惑がかかってしまう。しかし、大型車で一定距離以上の所で配送するとなれば、走りっぱなしというわけにはいかず、運転手を二人つけないといけない。鮮度が大切なのは分かるが、コストがかかり過ぎてしまうのだ。こう考えた全農県本部や大手農協は多い。今年は夏の異常天候で作柄が悪い上、遠距離で荷物の出荷を取りやめる県連が多くあったが、その県連と協業して出荷を代行した青果、花き業者もいくつか出てきた。かつては、産地市場の役割として、弘果弘前中央青果(株)のリンゴに代表されるように、卸売市場がJAの機能を代行することがあった。それに加えて、財務的にも信用がおけ、その系統組織と理念を同じくするものが、系統組織としてはペイしないエリアで機能を代行することを、今年から取り組み始めている。その品目は、果菜類や軟弱野菜だけでなく、切花では、菊やアルストロメリア、リンドウ、小菊等、量のまとまる品目において出てきたのが新しい補完的な流通だ。流通業者として、系統共販と、卸や流通業者が取り組むスタイルの流通が出てきたのである。今後とも増えていく可能性がある。

投稿者 磯村信夫 : 2014年9月22日 14:19

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