大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 国民生活にとって、農協と卸売市場は欠かせないという事実認識の上に立った改革が重要 | トップ | "今"に集中せよ »

2016年3月21日

今後の物日対応について

 12月と並んで切り花の需要期である3月、今年の市況は16日(水)から供給不足となり、過去5年で最も高い単価となった。何故そうなったのか、生産・消費、小売店の角度から分析し、今後の物日について考えたい。

 2015年度(4月~3月)の物日の相場を振り返ると、前進開花で8月盆の菊相場は高騰した。ここ15年無かった高値である。周年産地は暑さで奇形花の発生があり、露地栽培は高齢化で生産が少なかった。安定した出荷が出来ず、例え大産地でも日頃の出荷比率に合わせて市場を絞り、出荷数量を決定した。こうして8月は高騰した訳だ。また、消費者においては、伝統回帰から、お墓参りの需要は想定したよりも減っておらず、団塊ジュニアまで含めて、今後とも微減が想定される。また、7月盆の地域でも、盆は8月だと思っている若い人たちが増え、終戦の日にご先祖様にお参りする習慣が出来ている。

 9月の敬老の日・お彼岸期は天候にも恵まれ、ジャストインタイムであったので、生産者良し・消費者良し・小売店良しの花き流通となった。12月は稀にみる暖冬で、端境期にならず1月出荷の商品が年末に出てきてしまった為、花束加工業者や量販店、そして、間際の仕入れで荷が潤沢であった小売店も、皆さんまあまあの結果であった。もちろん、消費者も良い花が割安に買えて良かったのだが、景気動向もあり、生産者、卸・仲卸は前年を下回った。 

 さて、この3月は、昨年の8月盆と同様の展開だ。団塊世代が高齢者となってリタイアをし、退職の送別の花の数は確かに少ない。しかし、団塊ジュニアの子どもたちが小学校を卒業したり、中学へ入学したり、また、謝恩会や送別会、結婚式は結構多い。また、全国各県で花き振興協議会が発足され、国産花きイノベーション推進事業の予算で、花育活動が活発に行われている。そんな関係で、地元の花屋さんがもう一度学校と良い関係を築き、卒業式や謝恩会等の花の需要が喚起されてきている。単価は安いかもしれないが、日本中で行われている為、この需要は大きい。

 花の小売店業界から見ると、セルフの花束販売をしている量販店が、物日には通常の何倍にも売場面積を広くし、一日の売上金額が通常の10倍以上となっているようだ。全国の仲卸は花束加工を行い、小売店でも花束加工業者として量販店に納入している所が数多くあり、現存するスーパーマーケット、ホームセンターで、物日に花束を販売していない所は日本中で殆どなくなった。しっかりスケジュールされて花束加工・納品が為されるので、いつ仕入れて幾つ花束を作り、いつ店頭に並べるかが、日本中で全国一律になっている。一方、量販店の花売り場にシェアを奪われた花の専門店は、後継者がいない所が店を畳んだり、そうでなくても、嘗ては物日に仏花は3倍売れた所、今は2倍少々の数量しか売れなくなっている。しかも、一顧客あたりの単価は低下気味で、物日の仕入れは、物日の前の市1、2回のところが大変多くなった。さらに、地方でも宅配便が1日で届いたり、都市部ではインターネット販売で当日配送される為、気持ちの上で日本全国の専門店は使用する間際1回の市で仕入れている。

 今後の傾向として、特に仏花が売れる物日には量販店のシェアが高まり、逆に専門店のシェアは低くなる。そうなると、専門店の買参人が殆どの卸売市場は、存続が難しくなる可能性がある。流通量にしても、量販店は売れる物日で売場面積を広め、物日が終わると小さくする訳だから、物日とそうではない時の格差が益々大きくなる。徒歩と自転車で買い物をすることが出来る各県の都市部以外、物日の格差が益々大きくなるから、専門店の存続が難しくなるということだ。しかし、専門店は、新しい花との生活を提案するプロだ。ギフトや冠婚葬祭の花だけではなく、切花にしても、鉢物類にしても、新しいモノを取り入れて自分流にデザインする。お客様をうならせる新しいトレンド、あるいは、新しい花は、face to faceで接する専門店からしか生まれない。専門店が少なくなると、花の買い物コスト削減や、ワンストップショッピングで買い物時間削減を売り物にする量販店やインターネット花店の販売にも影響してくるだろう。ファッション業界のように、トップクラスの専門店を模倣して、大衆価格で販売すれば売れるという訳にはいかない。従って、花き業界をあげて、専門店の数が少なくなり過ぎないように、頑張って商売してもらえるようリテールサポートをしていかなければならない。これが、花き業界、そして、大田花きの方針だ。

 最後に整理すると、日本の花き産地は、花き輸入商社まで含め、今後とも天候や経済状況により、供給が不足する可能性がある。一方、需要量は、物日と普段の差が広がる。従って、人手不足や天候不順を前提に、鮮度保持対策と納期を守ることによって、計画通り物日に販売できるようにする。また、消費者の金額的な負担を少なくし、きちんと開花する、あるいは、花持ちを約束する商品をお届けすることが必要だ。専門店は、卸売市場から天候と産地状況をよく聞き取り、リスクも考えて、今までより早めの1、2回前の市から商材確保をして、余裕を持って販売することをお勧めする次第である。 

投稿者 磯村信夫 : 2016年3月21日 16:49

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.