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2015年3月30日
vol.110 イナバの花★南房総のカーネーション
2015年3月のうんちく探検隊は、春爛漫の房総半島に上陸!!\(^▽^\)(/^▽^)/ワーイ!
満開のサクラ、
大地を黄色く染める一面の菜の花、
早春を象徴する草原の花たち、
そして、おまけにこちらはソラマメの花、
みなさ~ん\(^o^)/!南房総にはうららかな春が到来しています!
よーし、ウン探は房総を暴走しちゃうぞぉ~!←ワー、デタデタ、オヤジギャグ。。。「(ーヘー;)ヤレヤレ
南房総市といえば、市章は花をデザインしたもの。
南房総市によると、南房総市の7つの地域を7枚の花びら7枚に喩え、南房総の暖かい春のイメージを図案化したものなのだとか。南房総市の夢と希望が自然と共存し発展する姿を表しているといいますが、まさにそのことが良く伝わる素晴らしい市章ですね。みなさまはさぞかし花生産が盛んな地域と思われるでしょう。
その通り、南房総市が誇る主な農業では花とビワ!そしてこの度、千葉県公認チーバ君のお出迎えに手を振り、
目指す先は・・・
おまっとちゃーん! 「イナバの花」の稲葉修司(イナバ・シュウジ)さんです!
稲葉さんは南房総のちょうど中ほどに位置する、花の有望な若手生産者さんたちが集まる地域で、そのおひとりとしてカーネーション生産に腕を振るっていらっしゃいます。
稲葉さんは花の街南房総市で、施設18棟、面積にしておよそ1,000坪にてカーネーション栽培に取り組まれています。お祖父様、お祖母様から受け継ぎ、カーネーション栽培を始めて丸11年。今年4月から12年目。
スタンダード25品種(バイパー、バイパーワインなど)、スプレー4品種の合計29品種を、なんとご家族4人という少数精鋭で栽培していらっしゃいます。
大田市場内の某仲卸店長さんに伺うと、稲葉さんのカーネーションは、
1. 大輪
2. 色のりが良い(発色が良い)
3. 花持ちがメチャンコよろしい
4. 茎が節折れせず、しなやかで女性的なつくり
であるからと、ユーザーの皆様から大変好評を得ていらっしゃるとのことw(゚o゚*)wスゴイネ!!
決して肩を張らない、この素朴な感じの稲葉さんから、どのようにしてそのようなカーネーションを作ることができるのか、うんちく探検隊がいざ潜入です!
☆生産
稲葉さん的カーネーションを作るために重要なことは、
① 日照
② 温度
③ 土
④ 灌水
⑤ ・・・そして、稲葉さんの哲学
これらについて順を追ってみて参りましょう。
まず①日照についてです。
カーネーション(だけではありませんが)は特に光を好む植物。原産地は南ヨーロッパ、及び地中海沿岸であること、また現在輸入品のカーネーションの多くは、生産性の良いコロンビアのボゴタ平原やケニアのナイバシャ湖周辺など、赤道直下の国や地域で作られていることを鑑みると、いかに生産に日照が大切であるか、想像に難くないと思います。
従って、良いものカーネーションを作るためには強光が不可欠。
稲葉さんのカーネーションを「イナバの花」たらしめている大きな要素の一つはこの南房総のお天道様。しかし、お天道様ばかりはご機嫌のコントールをできるものではありません。
温度は足りないときは暖房を使えばいいとしても、日照量が足りないときはどのように補うのでしょうか?
「補いません。」
チーン(+_+)
そりゃそうか。
しかし、無いものを有るようにすることができない場合、有るものを最大限に有効活用することが重要。そこで、天窓には光の透過性が良く、更には光を散らす秘密のフィルターを設置。お天道様からの恵みを偏らず、すべてのカーネーションに行き渡るよう工夫しています。
「日照量が十分でないと光合成ができないでしょ。植物は須らく光合成をしてデンプンを蓄えて生長する。
日照量が足りなければ生育が遅れる。体を作りたくても作れない。すると、発色が良くなかったり、輪のサイズが違ったり・・・・ということが起こるんだ」
うまく光合成ができより健康になると、カーネーションの場合はこのように茎や葉から白いワックスが分泌されます。
ワックスは手で擦ると簡単に取れますし、触ってもまったく有害なものではありません。それどころか、植物体の元気印!
例えば、ブドウなどの果実の表面に白い粉のようなものが付いているのを見たことはありませんか?まさかウン探読者の皆さまは、これが農薬だなんて思っていらっしゃいませんよね~??
これらはブルーム(果粉:かふん)といって、果実に含まれる脂質から作られたロウが表面に付いたもの。植物の病気を予防したり、鮮度の目安にもなったりするのです。
つまり、カーネーションの葉や茎についているワックスも、このブルームと同じ役割を持つものだということなのです!
稲葉さんの圃場を拝見した瞬間、グリーンというよりも"シルバー"な印象を受けました。
つまりそれは、この葉や茎から出ているワックスの色なのですね。
「ワックスが出た方が健康体であると言われているんだ」
稲葉さんのカーネーションは健康体!健康こそ美しいカーネーションの源です。
②温度
「昔は管理温度を相対的に低くしていたのですが、実は今は少し作り方を変えて温度も少し高くしたんだ。」
作り方を変えた??(゚ー゚*?)
「そう、私も昔は節(ふし)がゴツゴツとして太くしっかりした、男性的なカーネーションを作っていた。
その時は、真冬でも昼間は天窓を全開にしてハウス内の温度を低めに設定。すると植物がじっくりゆっくり育つので、茎・節がごつごつと太いものができる。
ただそれは、私の目指すしなやかな花とは異なるし、採花率にも影響するので作り方を変えることに。温度でいえば、一般的な管理温度は15-20度のところ、ウチはそれより気持ち高い温度で管理したんだ。」
すると"女性的な花"と褒められるようになったわけですね。
でも、南房総といえども冬の寒さは結構厳しくて、燃料代も大変なのでは?
「そう思ってね、試してみたのが薪ストーブなんだ」
ま、薪ストーブ!?ハウスの中で?
稲葉さんが試しに導入された噂の薪ストーブがこちら。
しかも結構カッチョええ。なんかイメージしていたのと違いますな。
その名も「スーパーゴロンタ」。
地元の森林組合から購入した間伐材を薪としてスーパーゴロンタに投入します。
「12時間燃え続けるので、夕方点火すると翌朝まであったか~いンだから~ぁ
夜温を最適といわれる10℃前後に保つことができるんだ」
燃料費の削減になりますね・・・と思いきや、
1パレット(1㎥)の薪↓コレを、
3日で1つ消費します。
こっそり1パレット分の薪代を聞いてみると・・・うーん、まあ、なんといいますか、決して安いものではありませんね。
ウン探の予想よりは高い。
「でも、重油に比べたら節約できるからね。
メインは重油で暖房を付けることだけど、補助的に薪ストーブを使う。これが試しに導入してみた私の結論。」
なるほど、いずれにしても花き生産にはお金がかかるということですね(*_*;
でも、寒いのはお金がかかったとしてもなんとか解決できるとして、夏場の暑さはどのように対処するのですか?
「マメに水をかけて気化熱で気温を下げたり、換気をしたりして対策を取っている。
カーネーションは暑いのは苦手なんだ。暑いと植物の呼吸が激しくなり、体力を使ってしまう。すると花径が小さくなったり、花の力がなくなったりするんだよ。
カーネーションの場合は30度を超えると生育が停止して、自分を守るようになる。この辺りの地域では外で30度を超える日は頻発するから、ハウスの中ではさらに暑く35度くらいはザラにあるんだよ。
でも、ウチの生産サイクルからすると6月に改植するから、夏はまだ苗の状態で迎えることになる。苗のうちはまだ若いから大丈夫なんだ。」
コロンビアやケニアなど、世界でみるとカーネーションの大産地赤道直下の国なので、てっきり暑さも得意かと思ってしまいます。しかーし!これは大間違い。
赤道直下の国でも標高の高い所で作っているので、夏は冷涼、冬は温暖な気候なのです。もちろん夏だって日本のドロドロに暑い夏より涼しく過ごしやすい。
このように実は暑さが苦手なカーネーション。6月に定植&1年栽培というのは、暖地におけるカーネーション栽培の定番、且つ冬も比較的温暖で日照量の多い南房総に適した方法です。なぜなら、熱帯地域より恐ろしい日本のドロドロドに暑い夏を、カーネーションが若いうちに過ごすことができ、冬の加温で最適な温度帯で生長を促すことができるから。
温度が低下し、切り花の品質が良くなり始める10-11月ころから出荷し始め、稼ぎ時の母の日に納品を完遂し、6月に出荷終了というのは理想的なサイクル。だからこそ、ココ南房総市でカーネーションを作る意味があるというワケです。
③土
稲葉さんは地植え栽培しています。
「ベンチ栽培は限られた空間の中でしか根を張ることができないでしょ。カーネーションの場合、ベンチ栽培が合う品種と合わない品種とがあるんだ。私が作っている品種は、ベンチ栽培では限りなく軟弱に育ちやすい。
でも土耕にすれば、下はどこまでも伸びたいところまで根が伸びるから、株を作るのに適している。」
どのような土を使っていらっしゃるのですか。
「ここに昔からあった土。ここは昔は田んぼだったんだ」
では、比較的粘土質ということでしょうか。
「そうだね。ハウスによっても微妙に土の性質が異なるけど、粘土質というのがカーネーションの栽培に適している。じわじわと根が張っていくから良い株ができるんだ。」
粘土質であることの長所は主に、
・保肥性・・・肥料の持ちが良い
・保水性・・・水持ちが良い
これらをうまくコントロールできればとても良いカーネーションができます。砂系が混じっている土で作ったのと、粘土質で作ったのとでは、株の形が全く違うのだとか。
「でも実は砂が混じっていた方が枯れない。」
え???(゚_。)?(。_゚)?
砂地の方が枯れない?砂地の方が水が切れてすぐ枯れてしまいそうなイメージ・・・ですが、なぜでしょうか。
「病気が伝わりにくいから。
植物の大敵である病原菌は水を伝って伝染していく。粘土質の土の方が保水性が高いので、病気が蔓延するリスクが高い。だから、病原菌のリスクが低く、枯れないのは砂土の方なんだ」
なるほど。
「でも、以前トラブルでカーネーション生産を止めようと思うくらいくじけそうになったことがあってね」
稲葉さんがくじけそうになるなんて、何が起こったのですか?
「ウチの主力の品種であるバイパーとバイパーワインが半分以上枯れてしまった年がある。
もともと合わない場所に植えてしまったことがいけなかった。この品種は病気に弱い特性があるので、地下水がある場所には絶対植えてはいけなかった・・・のに、間違えたため枯らしてしまったんだ。」
地下水が流れていて、土壌中の湿度が高かったのかもしれませんね。それでもくじけずに生産を続けてくださってよかったです。
④灌水
稲葉さんのカーネーションの「イナバの花」たらしめる4つ目のポイント、それは灌水です。
灌水は3日に1回くらい。(ハウスによっても異なりますが)畝に走るチューブで灌水。チューブにはこのように穴が開いていて、ここからピョロロロロ~と水が出てきて灌水できる仕組みになっています。
それにしも、なんだか表面が割れてカピカピの様相ですが、そろそろ水を遣らなくて大丈夫なのでしょうか(゚ペ)?
「まだ大丈夫。
表面はカピカピに乾いていても。
乾いて見えるでしょ。でもちょっと掘ると・・・・
ほら、土の色が変わっているでしょ。もう湿っているんだ。十分水を蓄えている証拠。」
あら本当です!
乾いているのは表面だけなのですね。水を遣りすぎてしまうと根腐れや病気の原因になりますから、表面が割れても慌てず騒がず、3日に1回を守ります。
⑤稲葉さんの哲学(フィロソフィー)
そして、稲葉さんのカーネーションをイナバの花たらしめている最後のポイント。稲葉修司さんの哲学です。
どのような花を消費者の皆様に届けたいと思いますか。
「きれいな花。これに尽きる。
見ていて"いいね"と思ってもらえるような花。
花は咲いてなければ花ではない。これが私の哲学。
だからできるだけ畑で咲かせて出荷する。」
←ベートーヴェン風
そう、なんといっても稲葉さんの花が違うのは、「咲かせて出荷する」という点です。それも稲葉さんのこのような哲学が根底にあるからこそ。
「だから切るタイミングが他のカーネーション生産者さんより遅いんです。花が十分咲いてから切る。
例えば、他の人がこのくらい、
あるいは人によっては早いとこのくらいの開花ステージで切る花を、
私たちはこれくらいになってからようやく切るんです。
」
稲葉さんは、中心の花弁まで全て開き切ってから出荷します。
←稲葉さん的にはこれでもまだぜーんぜん早い。
収穫のタイミングまでまだもう少し。
もしかすると、"それでは日持ちが短くなるのでは?"と心配される方もいらっしゃるかも!?しかーし、
「日持ちは同じです」
と稲葉さんは自信を持って答えてくださいました。
「ただ、気温の高い季節は輸送中に花弁が傷付いたりという事故も起こりえるので、やや硬めに切るようにします。でもなるべくならば花を咲かせて出荷する。畑で咲かせる!これが基本。」
だからこそ稲葉さんの花は大輪で日持ちも十分なのです。
根から切り離されてしまった花は栄養供給元を失います。一方、つぼみが開花する瞬間には大変なエネルギーを必要とします。しかし、その時に切り離されてしまうとエネルギー供給元がないので、開花はしても大きく展開することは難しいのです。それならば、育ってきた畑でその花の力を100%引き出して、咲かせてから出荷した方がより大輪で力のある花になる。そのようなお考えに基づいているのです。
ほかの生産者さんが5-6分咲きで出荷する中、咲き切ってから出荷するのは勇気がいることのように思いますが、どうしてそのような結論に至ったのでしょうか。
「祖父の時代からそうしています。これが当たり前だと思っていてね。
ウチがちょっと違うというのは、他の人と話していてやっと気づいたんだ。」
なるほど、もしかして咲かせて出荷するのは稲葉流が元祖なのでしょうか!?
「祖父が咲かせて出荷していたのは、スプレーカーネーションから生産を始めたということもあるかもしれません。
スプレーは咲かせて出荷しますから、その開花感覚でスタンダードも出荷していたのかな。
それに、お花屋さんで開花調整するのはとても大変ですよね。ウチの花なら買ってすぐに使っていただけます。」
稲葉さんの大輪・長持ちカーネーションは、"咲いている花を楽しんでほしい"、"咲いていなければ花ではない"という哲学から生まれているのです。
☆カーネーション周年出荷のテクニック?!
ところで稲葉さん、カーネーションは周年出荷されているイメージですが、全て同じタイミングで定植するのですか?それとも、開花時期から逆算して少しずつずらして定植するのですか。
「全て6月に改植するんだ。圃場一斉改植!」
はて?では、どのようにして10月から6月という長い間出荷していらっしゃるのでしょうか。
実は、先述のポイント4つのほかに、カーネーションならではの栽培方法に秘密があるのです。それは「株の作り方」に由来しています。
そのカーネーション生産の秘技をウン探がみなさまに伝授してしまいましょう!
カーネーションのプロなら誰もが知る生産方法です。株の仕立て方にはいくつもの方法がありますが、ここでは稲葉流として基本的な一例をご紹介します。
「苗を種苗会社から購入すると、最初にこういう形で入ってくるんだ。
これをまず定植する。」
地面からぷ~っと芽が出てくる。それをしたから5節目でプチン!と折る(摘心)。
せっかく伸びてきた芽ですが、勇気を持って摘心することが大切です。農業に必要なもののひとつ、「勇気」。そーでもないか?
「そうすると、下の節から新しい芽がいくつかに分かれて展開するので、まずは5本を残す。
そのうちの2本を折る。」
残した5本のうち、下図の1-3は出荷用として花を仕立て、4と5はぷちんと摘心(花を咲かせない)。
なんと(◎o◎)/!また摘心してしまうのですか?
「そう2本だけね。
3本は出荷用に収穫。」
ここまでで先に3本収穫。
折った2本から側枝がぷ~っとこんな感じで上がってくるので(下図6-9)、
その4本を出荷用に収穫。
これで収穫のタイミングをずらしながら今のところ合計7本収穫。
そして、最後に1-3の後にぷ~っと伸びてきた二番花を出荷用に仕立てて収穫。最低でも1本確保したとして、これで合計8本。
稲葉さんは1株から収穫最低8本を目指しています。
「このようにして、1株の中で出荷時期をずらしながらリレーをして収穫することができ、またこの方法で収量を上げることもできるんだ。
こちらが先に収穫できるもの(稲葉さんの左手の2本)で、これがあとから開花するもの(右手の2本)。
」
なるほど、明らかに開花ステージが違いますね。これが一斉改植でありながらずっと出荷できる秘密なのですね。なぜ8本なのでしょうか。
「"最低でも"8本ね。
ワンシーズンで○万本出荷したいという出荷計画がある。その数を植えた苗の数で割ると、1株当たり最低8本は収穫する必要があるという計算だよ。」
次々と芽(側枝)が上がる強靭な生命力宿るカーネーションの性質を生かして、収穫の時期をリレーしているのですね。株の仕立て方は、いろいろな方法がありますが、稲葉さん流の一例を紹介しました。
しかし、稲葉さんや暖地の生産者さんたちが出荷しない時期(改植中)も市場ではカーネーションを販売していますがどうしてでしょうか。
「それは、暖地と高冷地で出荷をリレーするからだよ。
千葉のような暖地は6-7月に定植、10月頃から母の日過ぎるまで。
暖地が改植中の夏場は、高冷地(北海道や東北、信州などの生産地)が出荷するというしくみになっているんだ。高冷地では12月くらいから少しずつ定植する。ちょうど半年ずれているでしょ。だから出荷期間を補い合えるんだ」
なるほど、出荷を国内の産地でリレーしているわけですね。
☆稲葉さんの名物10本束
通常、カーネーションといけば、1束25本が4束入って1ケース100入り。従って仲卸さんでも25本束で販売しているのが標準形。
しかし、稲葉さんのカーネーションは10本×5束で1ケース50本入り。従って、仲卸さんでも10本束で販売しているのです。
なぜこのような入り数にしたのでしょうか。
「バブルのころから比べると経済状況も変わってきているでしょ。
お花屋さんが1つの品種で25本となると、量的に使いきれないという話を聞いたんだ。だったら10本にした方が買ってもらいやすくなるし、利便性を高めることになるのかなと思って。」
実際に少量多品種で豊富なバラエティを買い揃えたい仲買人さんたちにとても人気なのです。
☆"稲葉さん直伝"良いカーネーションを見分ける三箇条
① ガクを触る・・・ガクを触ってみて、すごくフカフカとか張りがなかったりしたらNG。別のカーネーションを買いましょう。
② 葉や茎を見る・・・ワックスが載っているか。健康や新鮮さの目安です。ワックスが載り、全体的にシルバーがかっていれば◎
③ 花弁を見る・・・傷が付いていないかをチェックしましょう。傷があるとそこから変色してしまいます。
★まとめ
・ 稲葉さんのカーネーションを「イナバの花」たらしめているのは
① 日照 ② 温度 ③ 土 ④ 灌水 ⑤ 稲葉さんの哲学
・私たちが1年中カーネーションを楽しめるしくみ。キーワードは「リレー」
・稲葉さんのカーネーションの人気の秘密は「顧客目線の10本束」
~知っておきたい!カーネーション・ヒストリー基礎講座~
■日本におけるカーネーション栽培の始まり
母の日の発端は1907(明治40)年、米国のアンナ・ジャービスという女性が、亡き母のために教会で追悼式を開いたこと。参列してくれた人たち一人ひとりに、白いカーネーションを渡しました。
翌1908(明治41)年は、同じく米国のシアトルの百貨店で母の日イベントとして、アンナ・ジャービスの活動をヒントに、存命する母親には赤いカーネーションを、亡き母には白カーネーションを贈ることを企画しました。それが全米に拡大し、米国では1914年、議会で母の日と制定されました。
1909(明治42)年、シアトルに在住していた澤田さんという方(お名前・職業不詳)が帰国した際、いくつかのカーネーションを持ち帰り温室で栽培し始めたのが、日本におけるカーネーション栽培の発祥です。
澤田さん亡き後、栽培を引き継ぎカーネーションの生産を体系化したのが土倉龍次郎さんという奈良県出身の実業家。1910(明治43)年に目黒に施設を設け栽培に着手しました。カーネーションの生産史100年超において礎を作ったのはまさに土倉さん。生みの親が澤田さんだとすると、最初の育ての親は土倉さんと言ったところでしょうか。
以来、日本におけるカーネーション栽培100年の間に生産を手掛けた方は述べ8,000人以上。現在、生産真っ最中の方(およそ900軒)を含め、生産者様たちの日々弛まぬご努力のお陰で、日進月歩の生産技術があり、私たちが今のカーネーションを楽しむことができるのです。
長い歴史に思いを馳せながら、ぜひ母の日には素敵なカーネーションを提案していきたいものですね。
・・・参考文献・・・
「カーネーション生産の歴史」 社団法人日本花き生産協会 カーネーション部会
「農業技術体系」花卉編7 農山漁村文化協会
「カーネーションをつくりこなす」宇田明氏著 農山漁村文化協会