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2006年9月29日

vol.22岩手県八幡平市 安代りんどう

(岩手県 八幡平市)
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りんどうの生産額、裁判面積ともに日本一の岩手県八幡平市へ行ってきました!


八幡平市(はちまんたいし)というと耳慣れない響きですが、地図のように安代市、西根町、松尾市が合併して “安代 新いわて農協” として出荷されています。
そう、オリジナル品種 『安代の○○』シリーズでお馴染みですよね!


りんどう栽培が長野より岩手に導入されたのが37年前。
中でも八幡平・安代エリアは、北緯40度、標高300?400mの安比高原があり、りんどうの生育に最適な環境なのです!
今や、全国シェアNO.1の岩手の中でも、栽培面積100ヘクタールと、1番の生産量を誇っています!

?りんどうは田んぼの中!??

そんなりんどう栽培の現場にお邪魔しました。
CIMG1592.jpg 田んぼに挟まれた土地で露地栽培されていました。
というのも田んぼの転作なのです。
連作障害(*1)を避けるため、同じ土地でおよそ5年間栽培したら、また田んぼに戻ります。
つまり、5年後にはこの場所が田んぼになり、お隣がりんどう畑に変わっているわけです!


(*1)連作障害:同じ土地で同じ種類の作物を毎年連続して栽培した時、生育が極端に悪くなったり、枯れたりすることが見られる生育障害のこと。

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りんどう部会の会員は、なんと200名!
生産量日本一も頷けます。
畠山正徳さんは、その部会で6期12年にも亘って部会長を務めたパワフルなお方なのです!

CIMG1707.jpg
田んぼということは水遣りもラクラク。
そこで、「作業の中で一番大変なことは何ですか?」と質問してみたところ
「月3回の消毒」という答えが返ってきました。
天敵のダニ対策です。

畠山さんの栽培面積は1町8反=17,856?の広さを保有していらっしゃいます。
え?、サッカーグラウンドの2.5倍の広さと言えば想像がつくでしょうか?
となると、1回が1日で終わるとは限らないわけですね。
それは大変な作業量です。

CIMG1712.jpg
そんな話を伺っている間も、奥様はパキパキと音を立てながら黙々と採花作業をされていました。
折りしも、訪問したのはお彼岸用出荷の最盛期!お忙しいところをスミマセンm(_ _)m
採花作業は、ハサミではなく、手で折っていくんです。
「数本だったら楽そうだけど、この時期の晩生種は茎が硬くて折るのにも力がいるから、ずっと作業してると痛いんだよ、
ほらっ!」

CIMG1710.jpgと見せてくれた手にはペンダコならぬ、立派なりんどうダコ(?)ができていました!

「こんなの撮らなくていいよぉ」と恥ずかしがる畠山さんでしたが、
「高い時はいいけど、安くなると指が疼くんだよ」なんてお話も…。

あぜ道に詰まれたりんどうの山。これは?
CIMG1716.jpg
「曲がりで出荷できないやつだよ。そのまま残しておいてもしょうがないから、ついでに摘み取っているんだよ。」とのこと。
もったいないです、使えそうなのに…。
でも、手間や運賃などの経費を考えると出荷しない方がいい、という結論に達するわけです。
なんだが寂しい感じがします…。

?“りんどうは振ってから使う”ってホント!??

ところで、「りんどうは振ってから使わなきゃいけないから面倒で…」なんてお花屋さんの声があるんですけど…。
「昔は雨で花が濡れたり、汗をかくと、ストーブを炊きながら扇風機かけたけど水が残っちゃったんだよ。それで振っていたのかなぁ?」
「でも、今は水槽に入れてバーナーで温風をかけて乾燥させるから水分は残らないよ! 花の中で光っているのは蜜だからね。振っても振らなくても日持ちは変わらないよ!」 ということです。
振ってから使っていた方々、振ると蜜が垂れてきて逆効果ですのでご注意ください!

続いて、ご自宅脇にある荷造りをする作業場を見せていただきました。
まずは、この道37年のおばあちゃんによる厳しい目でチェック!

花付きと丈を見て、2L、L、M、曲がり…といった具合に選別していきます。
2万本の出荷量がある時は、その内の1万本以上をこうして一人で選別するのだとか。
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今、流行のヨーロッパスタイルのブーケでは長さを必要としなかったりするので、市場も短めのものをもっとください!なんてお願いしているんですが、そんな声に応えて「短いのがいいって言うから、今までのLはMに、MはSに等級をひとつ落として出荷しているんだよ。」とちょっと寂しげな表情を見せたおばあちゃんが気になりました。

そして、おばあちゃんによって選別された花は下葉を取って束ねる機械に通されます。
CIMG1718.jpgCIMG1719.jpgCIMG1731.jpg
                                完成品がこちら↑Lでもボリュームは2L並み!
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そして、雨の日に採花した場合は、この乾燥機で40℃で30分間乾燥させます。

CIMG1723.jpg


大きな水槽で水揚げをして、ここでやっと箱詰めとできる状態になります。

そして、箱の中にはコレが花と一緒に入れられます。
CIMG1687.jpg生産者カードです。
これには『生産者名』と、『商品サポートセンター お客様相談室』の連絡先が明記されています。
丹精込めて育てた安代オリジナルのりんどうを、自身を持って出荷している生産者の方々の気持ちが伝わってきます。

?安代オリジナル品種です!?

natu.JPG  nyuu.JPG   samasuno.JPG
      ?                  ?                ?

syosyu.JPG  aki.JPG  bansyu.JPG 
       ?                  ?                ?
 
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       ?                  ?                ?


?安代の夏   6月下旬?8月上旬
?ニューハイブリットアシロ  7月中旬?8月下旬
?サマースノー 7月下旬?8月中旬
?安代の初秋  8月中旬?下旬
?安代の秋   8月下旬?9月中旬
?安代の晩秋  9月中旬?9月下旬
?安代の星影  9月上旬?中旬
?ラブリーアシロ 9月中旬?10月上旬
?安代のさわかぜ 10月上旬?下旬

このようなオリジナル品種は八幡平市花き研究開発センターで生み出されています。
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←副所長の横山さん。

ここではまだ市場に流通していない、りんどうのイメージを変えるような色、咲き方の花がたくさん咲いていました!

CIMG1597.jpg CIMG1601.jpg
この2つは、まだ名前も決まっていないニューフェイス!
左はブルーですが花の中が白、右は白地にグレイッシュブルーの縁取りがされているのが特徴。
残念ながら これ以上はお見せできませんが、今後の出荷に乞う期待!

‘安代りんどう’のホームページは こちら→http://www.ashiro.net/~rindo/main.html

ここで“りんどうのウンチク”をご紹介♪

 りんどうはリンドウ科の多年草、その名前や姿から日本固有の植物のように思われがちですが、もともとは世界中の山野に自生する山野草で、亜寒帯から熱帯まで広く分布しています。  「りんどう」を漢字で書くと「竜胆」。龍の肝臓?
「りんどう」の根っこの汁はまるで胆汁のような(?)苦味だそうです。
このすごい苦味に、最上級を表す「竜」の字がつけられて「竜胆(りゅうたん)」と書くようになったと言われています。
そして「りゅうたん」がいつしか「りんどう」になったようです。 竜胆の根は、古来、胃薬として重宝され使われていました。
IMG_1828.jpg そして花言葉はふたつ。
ひとつは「正義と共に勝利を確信する」。これは、高貴な人を表す深い紫色からできた 花言葉かもしれません。
もう一つは、「悲しんでいる時のあなたを愛す」。秋という季節のロマンティックな 情景をイメージさせますね。

さて、短い秋の季節の「りんどう」の存在、花の趣が一段といとおしく感じられるようになったのではないでしょうか?
仏花としてだけではなく、この秋は洋花と組み合わせてみてください。
きっと、現代のスタイルにもマッチしますよ!

?鉢物でも出荷しています!?

続いて鉢物生産者の圃場を見てみましょう。 IMG_1872.jpg


現部会長の八幡博志さん。200名いる生産者のリーダーです。 鉢物はその内の20名によって生産されています。

安代のオリジナル品種である『メルヘン安代』、『シャインブルー』を鉢物仕立てにして出荷しています。 「短いというだけで捨てられていた品種が、その性質にあった仕立てにする事で、魅力的な花に化けたんです!その安代スタイルを大切にしたい!」と語ってくださいました。

IMG_1855.jpg  CIMG1662.jpg
↑ピンクが『メルヘンアシロ』、ブルーが『シャインブルー』
そして、白がNEWの『クリスタルアシロ』です。

では、りんどうは どのように育つのか聞いてみました。
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「りんどうの苗は1年養成する必要があるんだよ。
今年の芽が枯れて、越冬芽が出てくるんだけど、ほらっ!もう少し出てるでしょ。」

切花も同様に、定植して1年目は切らないのだそうです。
そして、2月下旬?3月にハウスへ入れて、鉢物として仕立てられるのです。

「今はまだ種類が少ないけど、安代オリジナル品種で今までにない仕立ての鉢を作って生きたい!」と意気込んでいらっしゃいます。

ここでも先程同様、「作業の中で一番大変な事はなんですか?」という質問をしたところ、
「2月に雪の下からポット苗を掘り起こす作業かな。これが重労働なんだよ!それを知って買ってほしいね。」という答えが返ってきました。
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ここは地区の中でも標高が高く、雪が1メートル20センチも積もるのだそうです。
その雪の下から掘り起こす必要があるのです。

でも、雪の下敷きになってしまって、りんどうは平気なんでしょうか?
「土と雪の境目は2?3℃、氷温冷蔵されるので最適な環境になるんだよ。」
なるほど、雪の中の方が暖かいんですね。

                                           ↑ここも冬には雪の下です。


切花の株も雪の下で越冬します。
そして、雪解け水によって肥料が土に馴染み、地力に変わるという効果もあるようです。
                     
でも、いいことばかりではありません。
ハウスの屋根からすべり落ちた雪の重みでハウスが倒壊する危険もあります。
そのため、ハウスとハウスの間隔があいてるのだそうです。
雪国ならではのご苦労がありますね。

CIMG1688.jpg
鉢物には、お花屋さんにはうれしい“りんどう豆知識”付き!
育て方などお客様へのアドバイスに役立つこと間違いなしです。

?安代のりんどうが集結!?

そして、集荷場へも足を運びました。
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各支部から荷物が集まり、バーコードをを読んで、品種、等級ごとに仕分けられます。

CIMG1702.jpg CIMG1701.jpg CIMG1703.jpg
バキューム処理で粗熱をとってから保冷庫へ入れられます。
そして、鮮度保持の為、保冷トラックで市場へ出荷されます。

ちょうど、生産者による抜き打ちチェックが行われていました。
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このように、生産者同士で規格、品質をチェックし合い、目線を合わせているのです。




こうした努力によって、200名での共撰出荷が成り立っているのですね。


安代 りんどうの格言



・安代のオリジナル性の高いりんどうに注目すべし!

・高品質のヒミツは、りんどう栽培に適した土地柄と、生産者同士で行う抜き打ちチェックに
 あり!

・『りんどうは振ってから使う』という常識は間違いである!

・りんどうをブーケやアレンジに活用して、新しい魅力を引き出そう!

(文責 中川美紀)
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