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2011年10月 3日

2011年度(上半期)

本年も残りあと12週となった。年度でも上半期が終わり、花き卸売市場の取扱金額がおおよそ出揃いつつある。鉢物類の売上が良かったので、前年比100をキープしているところもあるが、90~95というのが実績のようだ。震災直後の自粛ムードが終わり消費が戻ってきたことに胸をなでおろしているが、実態を見ると需給バランスが取れてきただけで、新しい業界の仕事の仕方や再建による成果は出ていない。しかし芽は育ってきているので、下期着実に成果として見える形にしていきたいと考えている。

1、鉢物類の単価は下げ止まった
特に2005年から単価の下落が著しい鉢物類は、コスト削減に目が行き、手を抜いた品物が多数出回るようになってきた。今年の単価が下げ止まったのは、経営の悪い生産者が花き栽培をやめたためで、需要より供給が少なくなったためである。日本は長い間デフレが続いたので、一般的に日本の特徴である「丁寧なものづくり、誠実な商売」を行うところが決して多くなく、諸外国には失礼だが、これも日本で作られたのかと思われる品物もある。鉢物も例外ではなく、鉢物生産者は需給バランスが取れたのだから、丁寧なものづくりを行い、消費者の手に渡った後も十分に楽しめるものを作ってもらいたい。

2、商品開発するのは生産地と卸の仕事
 卸の仕事は消費者の声を聞き、その地域を担当する小売店を通じて花を供給するというところにある。産地は消費者のほしがっている時に、欲しがっているスペックと価格で供給する必要がある。卸・仲卸にとって大切なことは新規顧客開拓であり、商売を通じての消費拡大やその消費ニーズを運命共同体である産地にぶつけていくことだ。この仕事ができていないのだ。
花き卸売市場はお互い過当競争に陥っている。結局皆で産地に赴き、荷引き競争をして、セリ前取引では他の市場より早く売り込んで、もう売れないと見たら見切って投げ売ってしまう。こんな消耗戦をしているうちに、産地は傷つき、小売店は販売企画も出来ないので、結局お客さんを増やすことにつながらない。このような現状がある。この古いやり方は3.11前のやり方だ。これがこの上半期直っていない。再建すべきは地域の卸売会社で健全経営できるよう合併統合して、力を蓄え、もし足りない荷があれば産地に買付けにいく、あるいは中核的な市場から買い付ける。荷揃えは地域の小売店の業者のためであって、卸売市場の金儲けのためではない。花き業界はこの時期困った。生存、存続の危機であったので、花き業界全体を考えた全体最適で臨むのであると思っていたら、未だにまだどうにかなると自分最適で物事を判断しようとしている。もうこのやり方は通用しないのである。

3、タバコ農家を花き生産に
 タバコ生産は専売公社、そしてJTと長い間生産者に仕事の高位平準化を要求してきた。よってタバコ農家の生産レベルは高く、すぐ花を作ることができるすばらしい能力を持ち合わせている。今年はJTと契約が切れ、転作を考えている農家が日本中にある。日本は少子高齢化で胃袋がしぼむ。しかし1人あたりの生活空間は広がり、ゆとりある居住空間が用意される。花の消費は増える。すくなくても増える余地はある。よって地域の農協に、あるいは篤農家に生産指導をお願いし、ぜひとも花を作ってもらいたいと思う。出荷先によって何を作ったら良いか、どんな品種を作ったら良いか変わってくる場合もあるので、まずどの市場に出荷するのかを決め、明確なサプライチェーンをイメージして、花を作ってもらいたい。

震災後当初、花の需要は上半期で90%行けばよいとした。おおむねその通りになった。4月~9月までで1年のうちの4割の金額を商いし、10月~3月までで6割の金額を商いする。昨年までは45:55だった。景気動向は甚だ厳しいが、努力した丁寧なものづくりに対して、誠実に販売する卸売市場と小売店が景気動向の厳しさに反して、適切な生産者手取りを約束できる環境下になっているとここでお伝えしておこう。

投稿者 磯村信夫 : 2011年10月 3日 00:00

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