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2006年12月18日

花は経済のバロメーター

今日18日(月)のセリ前、「FLOWER OF THE YEAR OTA2006」の表彰式が行なわれた。消費者の心をとらえた花であることは言うまでもないが、日本語が世界語になった「かわいい」であらわれるエレガントな中にも愛情をにじませる健康的な美しさや、健康・環境への価値観を体現した30歳代の女性が好む花が各シーズンのグランプリとなった。詳しくはHPを参照下さい。

さて今日はもう一つ、景気動向が非常に敏感に花の消費に影響を与えはじめたと思われるので、その実態をお話ししたい。昨年、よく地方の花市場の社長が「東京は景気が良くなってきたので、もうそろそろうちの方も良くなるはずだ。一年遅れるか一年半遅れで良くなるだろう」というので、僕は率直で失礼だが、「それは昔の話で今はそうではないのでは」と話した。今は基本的に経済の動向が変わり、人口動態も変わっているから、今までの経験が通用しない。10月から実感として景気が下向きだ。アメリカの景気減速、ユーロ圏の景気減速で来年の9月くらいまで企業のセクターは今までよりも良くない。しかし日本の個人消費セクターはわずかだが失業率が改善され、所得も向上してきた。団塊の世代のリタイアに合わせ、品質重視の消費性向は益々高まっていくだろう。
さて今言った経済そのもののパイの縮小を意味する少子高齢化の中で、食と住の産業はかなり再編が進んできた。花も当然、その中に組み込まれてゆくが、花の小売店舗は小料理屋と同様、チェーン展開しなくてもやっていけるし、また私生活ではそういう家族付き合いができる花屋の需要はしっかりあるので、そうは簡単に小売業、そして花の問屋の流通再編にはならない。しかし10月からの日々の取引の中で垣間見ることができる取引から見た経済はこうだ。

昨日の苔松・苔梅はよく売れた。会社の受付や料理屋などに飾る高級品の需要は昨年よりも強い。特に飲食店は花飾りに前向きだ。しかし、門松は減だ。正月休みのときに会社に福をもたらせるといっても、コストからして省いてもよいと合理的に判断している。お金の使い方はより個人と家族の絆へ使うべきだと会社の役員と総務も考えている。そういった価値観の流れであろう。10月から今まで油をたかなくてもよい時期に出荷しようとする人たちが多かった。これが例年の天候なら需要は秋・冬物が売れるからそれで良いが、今年は暖冬だから消費者はその気にならない。よって今は安くしても売れる時代ではないので、価格はストックやスナップ、スイートピーを中心に続落し、カスミソウのようにケニア産に足を引っ張られる格好で、出荷しても手取りがほとんど残らない結果となった。これは仕事需要が少なかったことと、個人需要が堅調だといっても欲しいものが許容範囲の値段じゃないと売れないことを示している。スタンダードタイプで花が大きい、咲き方がフリンジ咲きやらカップ咲き、野菜や果物のおもしろい形の実物、あるいは実付花木のように、たくさんあっても飛ぶように売れていくものがあり、また昔覚えた僕の相場観の3分の1や4分の1で取引されているものものある。このように時代は変わった。以前よりも前向きにはなったが、かつての前向きの伸び率とは全然違う。今流行りの言葉の“リセット”と同じように、リセットはシクラメン生産者だけでなく、生産流通業者に特に求められている。足元では従来通り仏花でも良いが、供給するものの狙いは「FLOWER OF THE YEAR OTA 2006」が示すように30歳代の女性の価値観に置くのが良いだろう。

投稿者 磯村信夫 : 2006年12月18日 00:00

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