大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« オランダ花市場の役割 | トップ | 母、子、孫の三世代母の日 »

2015年5月 4日

中身の『品質』は物語だ、モノじゃない、コトだ

 今年のゴールデンウィークは初夏の陽気となり、ついこの間まで春だというのに寒かったのが嘘のようだ。上越では雪がしっかり残っていて、私はゴールデンウィーク中スキーを楽しんだ。当日は例年より暑く、若者たちは殆ど半袖でスキーやスノーボードを楽しんでいた。また、ウグイスも鳴いていて、毎年春スキーを楽しむ私としては、スキー場でウグイスの声を聞くのは初めてだった。

 暖かくなると、花持ちが気になる。母の日を目前に、切花も鉢物も流通上どのような鮮度保持管理をしたのかが重要になってくるが、本日は提案を二つしたい。一つ目は、仲卸・小売店での販売時に「この花をどこの誰が作ったか」を明示していくことだ。昨年、某大手ファーストフード店の食品事故問題が話題となったが、大手ともなると、「納品業者の責任だ」と言うだけでは済まされない。それと同様、大手の卸売市場、輸入商社も、外見だけではなく、中身の質をしっかりと見極めることが重要である。また、生産会社や個人の生産者も、中身の品質まで責任を負わなければならない。中小企業ではそこまで手が廻らないかもしれない。しかし、最終的に、仲卸・小売の店頭で、原産地や生産者名を出して売ることで、生産者と流通業者が明確にその品物に責任を持ち、消費者により安心して買って頂けるようにするべきである。大田の仲卸通りでも、バケツに入れて販売し、生産者名等の記載のないものがある。水が揚がっているので外観は良いが、中身はどうなのか。何日前の荷か、体力はあるのか。少し見ただけでは分からない。流通業者が誠実に明示をしていかないと消費者まで質の責任であるブランドが届かないのである。このことを、原産地や生産者名を明記することで届けていきたい。

 二つ目の提案として、輸送中の鮮度保持体制を整えることが挙げられる。もう五年も前のことだが、オランダからロシアのサンクトペテルブルグ、また、モスクワへトラックで鉢物輸送を行っている業者と、その荷を販売しているホールセラーに話を伺ったところ、トラックの温度設定は15 ℃で、荷主さんが市場に出荷した日から五日ないし一週間でサンクトペテルブルグに、十日ないし十二日でモスクワに到着するとのことだった。これだけの時間がかかっているのである。こうなると、多肉の花鉢であるカランコエの持ちは抜群だろうが、他の花鉢はテストしないと難しい。持ちが良いとされている鉢物の方が、消費者の花持ちへの期待が切花よりも大きい為、花持ち保証は難しいのだ。日本でも、母の日の需要期になるとカーネーションの鉢物が沢山出回る。出荷から消費者に届くまで何日間かかるのか、その間の温度管理や日照管理等、その鮮度保持体制を整えなければならない。

 切花の品質クレームの事例だが、二年前の母の日に、コロンビアからの切花カーネーションで大クレームが発生したコトがある。以前、日本の生産者でも、自分のストッカーでためておいて母の日前に一斉に出荷し、クレームになってしまったカーネーションの生産者がいた。国内生産者は母の日以外にも出荷するので信用と名前が大切。そんなに悪いことをする人はいないが、これがコロンビアからとなるとさらに疑心暗鬼になる。こう考えると、日頃から深い付き合いで信頼がおけ、その会社自体がブランド化している商社とのみ付き合わざる負えない。そうしなければ、こちらの暖簾も危ない。誰が作り、どういう鮮度保持管理をされているか、しっかりとした物語を背景に作られた商品を売らなければならない。少なくとも、流通上の鮮度保持に対して買参人にきちんと説明して切花も鉢物も販売する必要がある。そのコトが物日に対する市場・仲卸・小売の責任である。

投稿者 磯村信夫 : 2015年5月 4日 15:33

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.