2013年6月18日
vol.100 JAみなみ信州 【後編】品目紹介と日本農業賞おめでとうの巻
前編に引き続きJAみなみ信州の後編は、ダリア以外をご紹介していきまーす!
★オキシペタルム
みなみ信州は花でいえば元々オキシペタルムから始まった花き産地です。
・・・ん?オキ△★_ΩΘ?
ソレ何の花?と思われた方へ、ここがこの花が残す大きな課題の一つ。
↓この花のことです。
え?ブルースターじゃないの?!と思われた方へ。
厳密にいうとブルースターというのは品種名です。つまり、バラの中のローテローゼにあたる名前です。
従いまして、例えばこの写真の品種名はピュアブルーなので、ブルースターではありませんということになります。しかもブルースターという品種は現在ほとんど流通していません。
むしろ、ブルースターとは全く別の花といっていいほどあらゆる点が改良され、生まれ変わっています。
そう考えると、こんなにかわいらしい花の名前が、なんとも難しい学名のオキシペタルム(以下「オキシ」と呼ばせていただくことがあります)という名前で流通しているのが何だかミスマッチに思えてきます。馴染みの薄い名前を使って消費拡大を推進していくのは、大変な障壁になります。この名前はオキシ自身のためにもなんとかしたい課題の一つです。(最近、学名はTweediaトゥイーディアが使われることがあります)
なんて、ブーブー(-ε-)言っている場合ではなく、こちらはJAみなみ信州でオキシ一筋30年の池田毅さん。
生産のみでなくオキシの育種家さんでもあり、白、ピンク、紫など様々な色と形と性質のものを生み出されているのです。
ダリアの周年栽培を方針の軸に据えてから、多くの農家さんがダリア生産に切り替えましたが、オキシの魅力に取りつかれ、今でもなお、オキシの育種、生産から手掛けていらっしゃる、まさに日本を代表するオキシペタルムのトップブリーダーなのです!
池田さんの心を離さないオキシの魅力とは何ですか?
「初めて見たときにね、"なんだこの絵具を垂らしたような色は!?"っていうスゴイ衝撃を覚えたんだ。片面だけに花をつける面白さと、水彩画のような濃淡。
オキシと意見が合ったというか、美意識が通じたっていう感じかな」
オキシを一目見た瞬間に電流が走ったような感覚ですか?!
いわゆる一目惚れというやつですね、い・け・だ・さん❤
ぬぁんと、早速見つけてしまいました!
さすが育種家さんの圃場には、まだ見ぬ潜在パワーに溢れた逸材が隠されていますね~!
池田さんの圃場で見つけたのは初めて見るオキシペタルム。
ブルーでもなくピンクでもホワイトでもなく、なんとパーポー(←パープル)!
まさに第4の色Σ(゚口゚;
しかも、この品種は巷で有名なAKB48のおねーちゃんがある日池田さんの圃場を訪れて、「私の名前を付けてください!」ということになり、命名された"マリヤンヌパープル"。
なんだか仮想物語のような流れですが、現実のお話。事実は小説より奇なり・・・ですね!
"鈴木まりや"さんという方だったそうで、ニックネームを「マリヤンヌ」というそうです。まりやさんは、今上海のAKBでご活躍中だとか。いーまーい~ずこぉ~♪(「荒城の月」風)
しかし、この品種はまだ固定しているところで、すぐ出荷とはなりません。
オキシの品種固定は誕生から10年かかると池田さんはおっしゃいますので、マリヤンヌパーポーのデビューはまだまだ当分先となります。とはいえ、日々花に従事する私たちに将来の楽しみと夢を提供してくださっていますね。
ところで、オキシペタルムの魅力の一つがこの花の中心部分、それぞれの品種が持つ色のコントラストが美しい~(≧∇≦)!
ん?でもなんでしょ?中心を囲む王冠ぽい部分?!
これは副花冠(ふくかかん)という部分で、雄しべの一部が変形したものです。その中にスカイツリーのようにそびえ立つのが雌ずい(しずい)、つまりめしべのこと。
ん?では本当の雄しべは?
「雄しべは中の方にあり外からは見えないんだ。そこに花粉塊が付いていて、蜂が来たときにしたに押し込んだりして受粉するんだよ。人工的に授粉する場合は、筆を使うんだよ」
変わり枝を見つけたらそこから10年。オキシの育種はなにしろ気の長い道のりです。時間もかかるし、一度始めたら止められないというのが、池田さんがオキシに30年傾注している理由の一つでもあるかもしれません。ウン探も30年続いて、池田さんの新品種をまたいろいろとご紹介したいですね。
池田さんのオキシは、花弁が固く、花付きが良く、花持ちも良いのが特徴です。
↑切れ目なく連なる花が美しいですね。
花つきの良さ、透き通るような白、品の良さ、ブライダルで使ったら1輪は小さいながら断然目を引きますね。
色によっても全く性質が異なるという池田さん。
それは純粋に遺伝子レベルの品種特性なのですが、例えばピンクとブルーの品種は、形は似ていても「人と猿くらい違う!」のだとか。
なるほど、池田さんは性質を知り尽くしている分、私たちには似ているように思える部分も、全く違うことが分かるのかもしれません。西洋の人からしたら、見た目では日本人と近隣アジア人の区別がつかないというのと同じでしょうかね?
私たちとは遺伝子レベルで全く異なるその猿に悪さをされて、池田さんは頭を痛めています。実はサルだけではなく、シカやイノシシなど強敵揃い。
みなさんアレをご覧ください!LOOK UP!!
補修されたハウスの天井。なんとサルが飛び込んで来た跡なんだそうで、飛び込んできてハウスが損傷したことがこれまでに5回もあるのだとか。ほんとサル相手に損害賠償請求したいくらいですね!
池田さん、ところでオキシの良い水揚げ方法を教えてもらえませんか?(ケッコウナヤム・・・)
「オキシは切り口から白い樹液が出てくるからね、生ける前にそれを流しきった方が長持ちするよ。
一般家庭では切り口を20秒水に浸けて樹液を洗い流せば大丈夫。湯揚げの必要もない。基本的には出荷前に産地で水が上がるように処理しているからね。
今は品種改良されて、以前のオキシとは全然水揚げも花持ちも違うんだ。いわゆるブルースターと言われていた時代とは姿が似ていても、植物としてのポテンシャルは全く違う」
お~!オキシの世界に改革が起こったということですね。
池田さんとしては、今後オキシの育種の方向性をどのように進めていきたいと思われますか?
「一般家庭用の鉢物になる品種創出を目指す!」
なんと頼もしい、将来はオキシの新しいマーケットが生まれそうですv(≧∇≦)v
みなさん、みなみ信州から出荷されるオキシに大注目ですよ~!
JAみなみ信州からの月別オキシ出荷推移(大田花き取扱;2010-2012年)
★アストランティア
またまた難しい名前の花と思われたかもしれませんが、こちらの花のことです。
見たことある方もない方も、今回のうんちく探検隊で覚えちゃってください!
名前はラテン語のアストラ(astra=星)からきています。その名の通り星のように放射状に光を放つ形をしていらっしゃるではありませんか!
星の意味から命名された草花はたまに見かけますね。
例えばステルン・クーゲル。ステルンが「星」で、ドイツ語の「星の球」という意味。五角形が集まりひとつの球を形成しています。
キク科のアスターもasterも同様です。
花と星というのは、古来から人々が夢や希望を抱く対象となっていたという点において、何か共通するものがあるのかもしれません。
さて、本題に戻りますが、その人々の憧れの的アストランティアを栽培するのが、こちらの坂井貞敏さん・美加子さんご夫妻。
鋭いウン探読者の皆様なら、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。 普通のアストランティアより少し色が濃く見えませんか?
この品種は坂井さんが自ら選抜されたもので、みなみ信州のオリジナル商品なのです!
その名も「みなみレッド」。
写真↑の上がみなみレッドで、下がみなさんがよく見るアストランティアに近い色だと思います。
坂井さんのところでも淡い品種を栽培していましたが、突然変異で濃い品種が生まれ、引き寄せられるように花に近づいて行ったといいます。
「それを株ごと引き抜いて、鉢に植え替えて、大切に増やすんだ」
という坂井さん。色ばかりでなく、輪も大きく、どれもその直系は4cm近くあります。
取材中も休みなく働かれる美加子さんの手を拝見すると・・・
なんと"アストランティア・タコ"ができているではありませんか!?
↑中指の関節に2個!わかりますか?
でも、どうして手にタコができるのでしょうか。
「こうやってね、手で採花していくのよ。
そうするとね、だんだんここの皮膚が硬くなって、タコができちゃうの」うふふ^^
その口調から、美加子さんは掛け値なくアストランティアに対して愛情を注いでいる様子が良く伝わってきます。
美加子さんは「アストランティアは形が可愛いだけでなく、散らないし、花粉も落ちない便利な花でもあります。色々なシーンに使ってください」と話します。
みなみレッドは5-6月を中心に出荷されます。
大田花きでの取扱は以下の通り。(2010-2012年実績)
★フサスグリ
そして今回、最後の品目、フサスグリ。
こちらは圃場のみご覧ください。こんな風に高い標高の平らな場所で作っているのですね。
今年の作柄はまずまず。
実付きもなかなかよろしゅうござんしょ!葉も小粒できれいです。
フサスグリへの要望などございましたら、是非忌憚ないご意見をお寄せ下さい♪
大田花きでの取扱は以下の通りです。
★集荷所と清水芳実(しみず・よしみ)部会長
こちらがみなみ信州の集荷所です。
広いみなみ信州(なんてたって香川県と同じくらいの面積ですから!)では、このような集荷所がいくつかあり、まず生産者さんたちはここに自らの商品を持ち込む、もしくは農協のトラックが生産者さんの商品を集めて回り、集荷されます。
↓生産者さん自ら持ち込む様子
↓生産者さんのところに集荷に回ってきて到着したトラック
集荷所に届けられた商品をチェックをしているのは、ベテラン選手の佐々木さん。
「ダリアは全量検品します。
きれいだなと思って見るのではなく、何かあるかもしれないと注意しながら、丁寧にチェックします」
どのようなところを見るのですか?
「虫などは付いていないか、花傷みはないか、規格に合っているか(ボリューム・長さ)、添付された伝票と申告内容があっているかなどをチェックします。
長さが合っていない場合には市場への送り状の内容を修正したり、虫付きなどがあれば取り除いて入り数を変えたりします」
口調は優しい佐々木さんですが、お仕事は真剣そのもの!ちょっとしたシミや虫付きも見逃しません。
←例えばこの白い"かまくら"という品種。
右側の花弁に黒いポツポツがあるのがわかるでしょうか。佐々木さんは針でつついたようなこのようなシミも見逃すことなく、規格外としてはじかれます。
ここでの選別もみなみ信州のブランド維持に一役買っているわけですね。
佐々木さんのプロチェックをパスした商品は、行先を清水さんの采配によって決められ、全国の卸売市場に出荷されます。
どれどれ、大田花きはあるかな~・・・・・
ありました、ありました!写真左はダリアの久保田直人さん(前編にて紹介)と右側がオキシの池田さんの商品です。
大田花きにご出荷くださりありがとうございますm(_ _)m
こちらはみなみ信州の花き部会を取りまとめる部会長の清水芳実さん。清水さんご自身はダリアとリンゴを栽培されています。
みなみ信州の花き部会の部会長をされていて、大変なことは?
「なんてったって570軒近い部会員がいるからね、顔と名前が一致しない人がたくさんいる。部会長の任期は2年で、私は今1年たったところだから、全員と会ったわけではないし、一度くらい会っても覚えるのは難しいよね。
それから、花も200品目以上作っているから、この花の顔と名前を覚えるのがまた大変なんだよ」
花も1年中出荷されているわけではありませんからそうですよね。大きい部会だけに、人も花も覚えるのが大変ということですね。
「生産者さんの高齢化が問題だったけど、こちらは後継者も出てきて明るい兆し。
今年は6億を目指し、将来的には8億円の部会になっていきたいと思うよ」
出ました「8億円宣言!」w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!
もうこれは必達ですね。
◆清水部会長より消費者の皆さまへ一言
「JAみなみ信州の花を知って、どんどん使ってください。みなみ信州にご注文いただければ、品目もたいていのものは揃います」
これは頼りになります。みなさん、是非みなみ信州の花を使ってください。
◆急斜面を活用した農耕地
標高900メートル付近まで上がってきたところで、ふと目の前に開けた急斜面・・・よく見ればなんとここでも花を作っているではありませんか!?
「ヒペリカムとシュウメイギク、栗の木の木陰でアジサイ、ワラビなど、こういうところで70歳代、80歳代の人たちが花生産をしているんだよ」
と説明してくださる塩澤さん。
ワラビも作っていらっしゃるんですね。
「ここはマツタケの名産地でたくさん採れるんだけど、ワラビを乾燥させて、マツタケを出荷するときに箱の下に敷くんだ」
みなみ信州はいろいろ収穫できていいところですね。
それにしてもこの傾斜!
あたくしのフォトテク(写真の技術)ではなかなか伝わらないのではないと思うので、どのくらいのきつい傾斜か、試しにJAみなみ信州にこの4月に入社したピチピチの22歳、中島香奈さんにこの傾斜にトライしてもらっちゃいましょう!
ほら!この傾斜を登るのに、苦闘されている様子が伝わりますか?
ピチピチガールの中島さんがこれほど苦戦するほど本当に急斜面なのです!70-80歳代の方たちがその傾斜を克服してこの地で農業を営んでいらっしゃるとは・・・!
この急斜面を克服する工夫はいたるところに。
トロッコレール
それにしても、この渡し板・・・幅25cmくらいのこんな細いところをご高齢のおじーちゃま、おばーちゃまたちが渡って日々農作業をされていらっしゃると思うと、心配でなりなりません。くれぐれもお気を付けて!
「猫の額のような狭い場所も、更には急斜面であっても、こうやって農耕地にして 活用することができるんだ」
570軒近いみなみ信州の生産者さんは、大規模に花生産されているばかりではなく、傾斜のある小さな面積も花き生産のために耕している方もいらっしゃいます。耕地面積の大小、環境の有利・不利にかかわらず、意欲的に農業に取り組み、鋭利生産されているのです!
そしてなんと、この功績が称えられ、2013年3月、全国でも花き部会は初の日本農業賞(NHK、JA全中などの主催)で大賞を受賞されたのです!
こちらが栄誉ある農業大賞カップ
JAみなみ信州といえば、前編で述べた通り元々はオキシペタルムの産地でしたが、オキシ自体はバラやキクほど消費の多いものではありません。つまり、花だけでそれほど稼げるものではありませんでしたが、生産の主軸をダリアに据え、且つ施設栽培を利用して周年栽培を確立することで、生産金額を劇的に増やすことに成功しました。
また、みなみ信州の広大なエリアと標高差を生かした200品目以上の供給を拡大、結果的に長野の産業を盛り上げ、国内に多い山間部を有効活用するビジネスモデルをも作り上げたわけですね。
部会発足当初は3.6億円だった販売金額は2011年には5.4億に飛躍。まさに戦略に基づいたみなみ信州の躍進があったわけです。
さらには猫の額ほどの土地でも花作りを可能にし、おじーちゃま、おばーちゃまたちが生き甲斐をもって、元気に農業に励んでくれるようにした。
なんと言ってもこの功績が大きいのです。
平成25年厚生労働省発表の都道府県別寿命ランキングを見ると、長野県の寿命は男女ともにぬぁんと堂々第1位!
そのくらいご高齢のみなさまがお元気でいらっしゃるということですね。
元気が先か、やり甲斐が先かわかりませんが、もしかしたら花き生産という農業でみなさまの生き甲斐を作ったことも、本年発表で男女ともに1位に輝いたことに貢献しているのかもしれません。
そして、彼らの燃える花魂に火を点けたのがチャッカマン塩澤さんなのです。
プラス部会全体の団結力と実行力なしではこのような名誉ある賞はもらえません。この賞を受賞したことが、また生産意欲向上に繋がり、みなみ信州の大車輪は大きく前進しているのです。
日本の花き産地としてピリリと辛い、そして大きな存在感を誇るJAみなみ信州なのでした。
◆JAみなみ信州の格言 「日本農業賞受賞おめでとう記念」バージョン
・ダリアは電照栽培を使い、周年出荷を確立すべし。全国唯一の産地になる!
・ダリアの土は団粒構造がベスト!ダリアは土が作る!んだども、土はオラたちが作る!
・ダリアとの出会いは神様の贈り物。歯を食いしばって頑張れば、きっといい出会いがある!
・傾斜のきつい山間地も有効活用すべし!農作物は花がいいね!
・JAみなみ信州をJAみなみ信州たらしめているのは、地の利と技術とやる気とネットワーク!
おじーちゃま、おばーちゃまから20代の若手選手まで、みんな「明るく楽しい花生産」に取り組んでいます!
花作りの生き甲斐が生産者に活力を与え(・・・かどうか定かではありませんが、願わくばYES!)、長野県は全国1位の長寿県という実績を誇ります!
◆ホットなニュース
ちょうどみなみ信州に取材に伺った6月3日、14年後の2027年に開通予定のリニアのモデルがお目見えしたとニュースになっていました。このリニア、正式名称を「リニア中央新幹線 LO(エルゼロ)系」といい、東京から大阪間を時速500キロの猛スピードで結ぶ夢の特急網です。
そんなハイパー特急リニアが、なんと飯田に停車しみなみ信州の管内を横断するようになるのです!東京-名古屋間が40分だというので、飯田へは東京から30分程度で着いてしまうということでしょうか(驚)!
今回は飯田まで新宿から高速バスで4時間かけてお邪魔しました。人口約10万人の飯田市、みなみ信州の管内では17万人の商圏でありながら、住民のみなさんにとっては県外へのアクセスは大変不便なものでした。
ところが14年後には東京への日帰り出張をも実現してしまう夢のリニアなのです!
開通するころには飯田の産業もインフラも大きく様変わりすることでしょう。
全国一の長寿県にありながら、国内でも随一の成長株、みなみ信州!
これはもうみなみ信州の発展に目が離せません!
みなみ信州の花からも目を離さないでください(≧∇≦) !
2012年9月24日
vol.97 JA利根沼田 片品村支店(群馬県) アジサイ(後編)
前編からの続きで片品村です。
次にお邪魔したのはアナベルの桑原ゑみ子(くわばら・ゑみこ)さん。
標高700メートルほどのこの土地で栽培しています。圃場の外では黄金の稲穂が首(こうべ)を垂れます。
一方、圃場の中では今か今かと出荷を待つ完成度の高いアナベルたちがひしめき合っています。
う~ん、あまりにも立派なアナベル、もうなんだかアフロヘアに見えてきました。
アフロもええけど、一体、何センチあるのでしょう??
■直径30cm以上のアナベル
どれどれ・・・
ぬあんと、驚異の40cm越え∑(≧∇≦)!
片品村では、30cm以上を3L、25cmから30cm未満を2L、20cmから25cm未満をL、15cmから20cm未満をMと規格しています。
しかし、ゑみ子さんの圃場では3L超級の大物揃い!!
■アフロなで回し法
圃場でゑみ子さんの動きを見ていると、なぜかいい子いい子とアナベルをなでて回っています。何をやっていらっしゃるのでしょうか。
「こうやってね、いい子、いい子って頭をなでるの」
単にアフロヘアをなでているように見えますが、これは大変意味のあることなのです。
それは---
① 換気目的。いい子いい子しながら空気を通してやり、蒸れをなくして、腐敗や虫付きを防ぐ。
② ゴミを払う。手でなでながら、ゴミを払っている。茶色のガクを取り除く。
③ ひとつひとつのクオリティをチェックしていく。なでながら一輪一輪と向き合う。
“アフロなで回し法”とは、一見誰にでもできそうな簡単な作業のように見えますがとても重要で、目の肥えたゑみ子さんならではのマネジメント業務も含んだ行為なのです!
出荷の際は、アフロを上から見るだけでなく、必ず裏からも覗きこむ。そしてゴミがなければ、出荷OK!
■風の谷のアナベル
ゑみ子さんの圃場のすぐ横には、清流の流れる沢があり、大変気持ち良い風が吹きそよぎます。この沢では岩魚や山女などのいい魚が釣れるそうですが、よく見れば沢の岩は一枚岩。地盤がとてもしっかりしているんですね。
(片品村の生産者さんの地盤もしっかりしています!)
「アナベルの栽培に風は必須条件。沢からの風が大切なのよ~。空気が滞ると灰色かび病の原因になりかねないからね~」
まさに“風の谷のアナベル”。
灰色かび病とはいわゆる“ボト”のことです。バラやトルコギキョウなどでよく見られる細菌性の病気で、これにかかると黒い斑点が花弁に表れます。加湿の状態で発生しやすくなる性質があります。
ちなみに、ここゑみ子さんの風の谷では、隣の畑で満開を迎えた××の花が一面に咲き乱れます↓↓↓
××とは↑この白い花のこと。さて何でしょう??
ヒント:アナベルのソバに咲いている花です。
勘の鋭いウン探読者の皆さまはもうおわかりですね。蕎麦(ソバ)の花です。
失礼いたしました・・・。
■遮光
はい、もう一度遮光です。アナベルにももちろん必要。
アナベルはもともとフレッシュの状態では白いガクをしています。
それが8月くらいから花粉が落ちる頃になると徐々にガクがしっかりして、色が載ってくるようになるのです。
こちらでは遮光は80-85%。同じアジサイ類といっても、ミナヅキやライムライトとは遮光加減が異なるのですね。それぞれに研究し尽くされた結果なのでしょう。
「そう、濃い緑を出すためにはこのくらい遮光しなくちゃいけないのよ~」
とゑみ子さんはいいます。
■圃場に入ったら、まず何を見る?
ゑみ子さん、朝圃場に入ったら、まず何を見ますか?
「葉を見るのよ。
葉を見て、水が足りているかどうかを確認するの。葉が垂れていたらパイプで水やり。
葉を見た後に花の艶を見るのよ」
アナベルは水やり作業があるようです。こちらがその潅水パイプ。
まず葉をみて健康状態をチェックして、次に花をの艶を見てご機嫌を伺うといったところでしょうか。
採花はどのようなタイミングですか?
「午後2時30分から3時の間にするの。
すぐ桶に入れて群馬のおいしい水を2-3時間飲ませるのよ。
午前中に切るとなぜか水が上がらずに、葉が垂れてしまうの」
“なぜか午前中に切ると水が上がらない”というゑみ子さん。
ほぉ、これは何か植物生理学に関係しているのでしょうか。なぜかはわからないと言います。
理論はさておき、全ては経験に裏打ちされた結果なのです。
■選別
出荷の時は葉を3枚残して農協に持ち寄ります。
はい、ここを見逃してはいけません。
“葉を3枚残して農協に持ち込む”のです。
農協の集出荷場ではその葉を見て(花ではなく!)、水が十分に上がっているかどうかをチェック。
その葉がピンとしていなければ、農協から先に出ることはありません。
水が上がっていれば、その葉は全て選別者が取り除いて、葉が付いていないアフロの状態だけで出荷するのです。
つまり、葉は水が上がっているかどうかのリトマス紙としての役割のためだけに残して農協に持ち込むのです。
更に!
その選別は生産者さんとは何の利害関係もないパートさんたちが行います。
部会長の出荷物であろうが、新人生産者さんの出荷物であろうが、全て同じ基準で第三者によって仕分けされるのです。
そうおっしゃる農協の星さん。
え~、星さん、そんなことおっしゃって、実はそのパートさんが生産者さんの奥さんだったなんてこと、よくありますよねぇ~( ̄ー+ ̄)ニヤリ
↑わざと意地悪な質問。
「あはは、片品村はそんなことないよ。みなさん、完全に第三者。徹底的にフェアにやっていくし、厳しく選別していくんだ。
“そこまでしなくても”っていう声もあるけどね。でもこの厳しさも必要」
この選別の厳しさがあるからこそ、毎年驚異のクレームゼロ!
スゴイ!∑(゜◇゜;)
このような高級品、しかも繊細な高級品
且つシーズン物でクレームゼロですか!
しかも片品村は共選共販です。
共選共販とは、各農家さんが生産したものを出荷所へ持ち込み、全員同じ基準で企画を揃えて出荷するということです。
(作業後の選別所の様子) (片品村の広い冷蔵庫)
枝物という特殊な品目で共選共販というのは大変珍しいのです。
その理由は!( ^―゜)b
枝物というのはひとつひとつの個性が大変出やすい商材ですね。その個性が良かったりもするのですが、片品村はその個性が出やすい枝物で、35軒いらっしゃる生産者さんの規格を1つに統一し、厳しい選別基準をくぐりに抜けてご出荷されているのです。
まあ、実はそのディレクションもこの星さんの腕によるところが大きいのです。
↑決して全面に立ってぐいぐい引っ張っていくのではなく、片品村の協調を重視しつつ、要所要所で的確なアドバイスを行い、片品村のブランド化を実現する星さん。
今の片品村があるのは、星さんの手腕によるところが大きい。片品村の影の立役者。
「枝物の生産者が何十人いても、どのお客様がどの箱を開けても同じという信頼を得たいと思っているんだ。チームで団結して喜ばれる花を作っていきたい」
という星さん。ここが片品村がキラリと光る理由なのです。
はい、ココで片品村3軒目の石橋範明さん。奥様と一緒に主に秋色アジサイを生産出荷しています。
こちらの石橋さんご夫妻は、標高850メートルほどの高原において、てまりアジサイの在来品種を秋色に仕立てます。
実はお二人は千葉県ご出身。そもそもは片品村のスキー場に働きに来て、アジサイに魅せられてそのままココに住むことになってしまったという面白い経歴の持ち主。
大のアジサイ好きで、ご自宅の前はアジサイストリートと化しています。
秋色になるプロセスはどのようになっているのでしょうか。
「日が当たるところは、“アントシアニン”が出やすくなって、赤くなるみたいよ」とおっしゃるのは奥様の順子さん。
(日に当たったところは紫色に変化、↑ガクが重なり日が当らなかったところは緑色のまま)
結果的に・・・こちらをご覧ください。
同じアジサイでも日が当ったか否かで、同じ球形の中でもこのように色の差が出てくるのです。
「同じ品種なのに、光の加減で色々な色を演出してくれるのよね。場所が違うと全然違う」
と奥様。
秋色アジサイに必要なものは、
① 日照量
つまり「日焼け」が大切なのです。
② 湿度
高原ならではのこのカラッと加減!
③ 寒暖の差
片品村では日中は30―33度、夜は15度になります。
片品村では、この①―③を特別に人の手でコントロールすることなく、アジサイの栽培にいいように片品の自然によって管理されているのです。
①の日照量ですが、アジサイのあの美しいグラデーションは、日焼けの賜物なのです。
でも西日はNGx_(・ェ・)ダメダメ
石橋さんのところは、午前中の太陽はウェルカムでも西日を除けるために、このように遮光をしています。
「その奥はカラマツによる自然の遮光をしているんだよ」
なぬ??自然の遮光?どういうことでしょうか。
ふと上を見上げると・・・
あ、ほんまや~。自然の遮光ができとる(≧∇≦)/
ここは、カラマツ林を石橋さんの手で自らアジサイ栽培用に切り拓いた場所。
西にカラマツ林を残して、このようにカラマツによって自然に遮光するようにしています。なるほど、石橋さんのお名刺には“秋色アジサイと暮らす日々”と書いてあります。
「アジサイを生産する」というよりは、自然の中で共に生活しているという感覚なのかもしれません。
石橋さんのところは、カラマツの森の自然の腐葉土があるため雑草もあまり生えず、何も肥料を与えずとも、ふかふか柔らかい理想的な土が自然のうちにできているのです。
「アジサイは土壌が酸性になると青っぽくなって、アルカリ性になると赤っぽくなるでしょ。
でも赤っぽくなると秋色の発色が悪いから、青から作って秋色を出すんだ。
ここ片品の土は火山灰土でできているんだからアルカリ性になりやすい。そこで、酸性にするのに普通は肥料を入れるんだけど、ウチはカラマツの腐葉土が自然にできるからこれが天然の肥料になる」
火山灰??
えーとσ(゚・゚*)ンート・・・、浅間山(あさまやま)ですね!( ^ー゜)b
上毛カルタでいうトップバッター「浅間のいたずら 鬼の押し出し」。浅間山は標高2,524メートル、現在でも活発に火山活動をしています。
「そう、浅間山などの火山灰でできているから、水はけもいいし、水持ちもいい。
アルカリ性は自然の腐葉土で解消出来るんだ。
地力があるから大きいアジサイができる。あとはこの気象条件だよね。
①日照 ②湿度 ③寒暖差これが三拍子揃わないといいものはできない」
木々の紅葉に合わせて、自然の力を借りて徐々に変化してくのが私たちのアジサイ。
アジサイは簡単に収支が取れるものではないけど、私たちの夢なんだ。アジサイだけで食べていきたいっていうね。
今は労力を先行投資していると思っているんだよ。
新商品のスターバーストも出るから、こちらもよろしく!」
↑スターバースト
なるほど、石橋さんのこの笑顔ですよ。
正真正銘のフラワーピーポーですね。
石橋さんの圃場でそのようなお話しを伺い、あまりの気持ち良さに土を踏みながら、どんどん山に分け入っていったウン探でしたが、ふと我に返り・・・
あ、ヘビ出ませんよね?!
「ヘビは出ないけど、クマは出るよ!」
なんと、ギョギョーーーーーッ∑(゜◇゜;)
ク、クマですか・・・!
そういえば、これはなんだか不思議な倒れ方をしている・・・
よもやクマが“ごろん”か。
クマは基本的には夜行性のようですので、昼間のうちはまず大丈夫。
片品村を夜散歩する時は、クマに注意です!
今年で枝物生産12年目という片品村。
以前はトマトなどの野菜中心だったと言います。
ところが片品村のキーパーソンで星さんが東京の市場に研修にいらしてからというもの、枝物に目を付け、作付けを始めたことが枝物生産のきっかけとなりました。
初めは18人だった枝物も現在は35人、花全体でいえば63人にまで増えました。
標高と立地条件に合った品目を選んだ星さんの目論見は大当たり☆☆☆(←星三)
このように片品村は個人の高い技術とチームワークとで、全国に誇るアジサイを出荷しているのです。
【片品村の格言】
・ アジサイ類は水が好き。
でもミナヅキなどのピラミッドアジサイは、“片品村理論”に裏打ちされたオリジナルハウスで、水やりは朝露にお任せしよう!
・ アナベルはわが子のように“いい子、いい子”して空気の流れを作ってあげよう!病気も防げるし、クオリティチェックもできて、一石二、三鳥!!
・ 秋色アジサイに太陽の恵みを!日焼けで美しいグラデーションを作るべし!但し西日はあかん!
・ 個体差のある枝物といえども、規格は全員で統一。徹底した選別でパーフェクト産地を実現すべし!
・ 片品村という高原で、自然の恵みを最大限に生かして生産すべし!
2012年9月23日
vol.97 JA利根沼田 片品村支店(群馬県) アジサイ(前編)
この時期大田市場の仲卸通りを歩いていると、威光を放ちながら店頭に並べられているアナベルやピラミッドアジサイたち。
あまりにも大きな存在感に驚いて、どこからきているのかスリーブのシールを見れば「片品)JA利根沼田」と書いてある。
大田市場の中央通路の展示でも、圧倒的なインパクトを残しているではないか!
おっと、これはウンチク探検隊に新たなるミッションが生まれた気配です。
花ファンの皆さまのためにも、このアジサイがどこでどのように作られているのか、旅に出なくてはなりません!
重要な使命を背負って、ウン探いざ出陣です!
やってきたのは、うん探読者の皆さまならもうお馴染みの“鶴舞う形の群馬県”。
(↑群馬県民なら全員暗唱している「上毛カルタ」)
新幹線で高崎を過ぎて次の駅「上毛高原」。
なるほど、ここは日本でも屈指の温泉メッカか。
と思いきや、目指す場所はここからさらに1時間車を走らせた群馬県利根郡片品村。
ココはどういうところかというと、かの有名な尾瀬の群馬県側の入り口にあたります。
尾瀬は群馬県・福島県・栃木県・新潟県の4県にまたがる湿原で、いわゆる「表玄関口」と言われる群馬県側の入り口があるのが片品村なのです。
今まで片品村をご存知なかったあなたも、片品村は全国的に有名なところだということがお分かり頂けたかと思います!
そう、今回あの威光を放つグリーンアナベルなどのアジサイ類は、ここ片品村にあるJA利根沼田の片品村支店の生産者さんによって作られているのです。
農協名は以前JA片品村だったのですが、農協の合併でこのような名前になりました。
以下「片品村」と呼ばせて頂きます。
ここ片品村の近くには岩鞍スキー場があるほど冬場は雪がドカドカ降る。
「日中でもマイナス10度なんて日はザラにあるんだ。12月下旬から3月下旬くらいまではよく降るよ」
教えてくださったのは、JA利根沼田の星信弘(ほし・のぶひろ)さん。
では、ここで花を生産される方は豪雪をどのように捉えているのでしょうか。
「夏場に農業で稼ぐ我々としては、豪雪にもいいこともあるんだ」
例えばどのようなことかというと・・・
① 土壌が偏栄養になりにくい
雪が溶けていく時に塩分などが流され土壌がキレイになる。
すると、植物体が畑に入れた肥料を偏りなく吸収するから、こちらが期待した通りの効果が出やすい。その分良い品質の物を作ることができるということです。
WOW!ラッキー(≧∇≦)!
さすが高原片品村!
② 連作障害が起こりにくい
①のような理由により、結果連作障害も起こりにくいというわけです。
さすが自然を味方につけた片品村オリジナル農法。
③ 花芽を守る
雪の中に埋もれたアジサイたちは程良い湿度の中、寒さから新芽や花芽を傷めることなく、雪の中で守られる。
これが標高が高くても雪が降らないところだったりすると、寒さにやられてしまうんだなぁ~。
村内は標高700-1,000メートルくらいに生産者さんが点在しているので、それぞれの標高に適した品目を選んで作付しています。
また、同じ品目でも時期をずらしながらリレーして出荷できるため、出荷期を長くできることがメリットです。
まずお邪魔したのは、標高800メートルの高原でアジサイのミナヅキとライムライトを中心に生産される花き生産部会長の星野一郎(ほしの・いちろう)さん。そのほかにもアナベルや秋色アジサイ、スモークツリーなどを生産しています。
こちらはその星野一郎さん。
あ、あれ?どこかで聞いたようなお名前ですが・・・
そうか、銀河鉄道999の主人公が星野鉄郎だったかな。
ココは夜になれば星もきれいに見ることができそうだし、もしかして銀河鉄道999の発着地点て片品村だったのか??
星野さん、星野鉄郎さんとご親戚か何かですか?
「知らない」
あは~・・・^_^;
そうですよねぇ~。唐突に大変申し訳ございません。
夢と現(うつつ)とが混乱しがちな最近のウンチク探検隊を、現実にググッと引き戻してくださいました。
ググッと戻ったところで、アジサイ生産の真髄に迫りましょー!
こちらは星野さんのミナヅキとライムライトの圃場。
“豊満”と形容したくなるほどたわわに花が付いています。
わお~、どれどれ。1輪は何センチくらいあんのかな。
驚異の40セ~ンチ!みなさん、お手元で40センチがどのくらいか測ってみてください。
それを縦にしてみると、40cmの立体の花がどのくらい圧巻か、想像していただけると思います。
アジサイは頭が大きくなると、首を垂れて倒れてしまいます。
その時に花と花がぶつかると、そこに湿気がたまって腐敗の原因になっていまうので、このように花をあっちとこっちとで固定して、ぶつからないようにしています。
これひとつ大事な点ですね!
う~ん、何の仕掛けもなさそうですが、どうしてもこのアジサイを留めているテープが気になる・・・ムム、どうしてでしょう。
星野さん、このテープは普通のテープですか?
「普通のテープじゃないよ」
やはり!キラーン( ̄∀ ̄*)
「生分解するんだ」
生分解するテープ?
世の中、何でも土に還るように開発されているんですね~。スゴイ!
「そうだよ。ほら、最初はしなやかな普通のテープ、これでアジサイの枝をフラワーネットに留める。
このままじっとしていると固くなって、
アジサイを出荷し終わった頃にはパリパリボロボロに砕けるんだ。
最後は下に落ちて土に還るというわけ」
にゃるほどぉ~(≧∇≦)
さすが、持続可能な農業を実現していらっしゃいます!
■潅水は?
アジサイの別名はハイドランジア=「水の器」というくらいですから、アジサイ類は何をとっても水が好き。
潅水は大変だと思いますが、自動で行われたりしているのですか?
「潅水はしてない」
え??
“し、してない”??∑(゜◇゜;)
アジサイは水が好きなのに、水やりをしないってどーゆーことですかッ??
「このハウスに仕掛けがあるんだ」
このハウスね~・・・何も仕掛けがないように思いますが、確かにあまり見たことのないサイズかもとか、そのくらいしか気が付かないな~^_^;
「これは幅2.5メートルの片品村用特注ハウスでね」
とッ、特注ですか!アジサイ専用の?
「そうだよ、これのお陰で水をやらなくてもいいんだ。屋根に雨や朝露がこの袖の部分に溜まって、徐々に下に落ちていくんだ。これは片品村のオリジナル手法だよ」
おっとぉ、それで地面を自然に濡らしているから、潅水は必要ないわけですね。
むしろ、潅水をすると生長が促進されてしまい、締りのある良いものができなくなるのだとか。
「地面は乾いているように見えるけど、ちょっと掘れば十分に湿っているし、根はここまで来ているからね。
ウン探さん、よく見てってよ。ここまで根が来ているんだ」
と地下足袋を履いた足で示す星野さん。
「この土の中もしっかり湿っているよ!」
んまった~、星野さんたら!
こんなに表面が乾いて見えるのに、この中が湿っているわけ・・・
「ほら、見てごらん」
あ、ほんまや!!湿っとる!!w( ̄Д ̄;)wワオッ!!(驚きのあまりいきなり関西弁)
表面は一見乾いているように見えても、表土を1センチめくると、湿った違う色の土が出てきたのです!
「あ、見えた。ほれ、これが根だよ」
え!?この白いひげみたいのが・・・ですか?
「そう、これが株からぴょろろ~んて伸びてここまで来ている。深いところにはもっとしっかり根が張っているよ。古い根ほどよく張っている」
Σ(゚д゚;) ヌオォ!?ひょえ~。ちょっと掘っただけで根の先端がチョロチョロと。
しかも掘れば掘るほど根っこがジャンジャカ出てくるぅ~!
貴重なものを見せていただきました。
片品村オリジナルハウスを以ってして、潅水は邪道であるということが納得できました。
「その水が届いて、根が十分に張って、ハウスの中の方まで水をやらなくてもいい距離っていうのが、2.5メートルなんだ。
昔は2列で植えたりもしていただけど、2列は混み過ぎてダメ。そこで結果的にこのスタイルがいいということが分かった。
ハウスの天上のカーブもほかのものとちょっと違う。パイプも丈夫だし、全てが片品村オリジナルなんだ」
ちょうど取材に訪れた日は、9月7日で二十四節気のうち、白露に当たります。
白露とは「大気が徐々に冷えてきて、露ができ始めるころ」。つまり、星野さんのところでは、この露を使って栽培しているわけです。
でも、白露が来る前の真夏は露ができないのでは?
「大丈夫、真夏でもできるんだ。ここは高原だからね。朝露は毎日のことだよ」
Oh,イッツ・ミラコー!(←ミラクル)でございます。さすが高原!
考え抜かれた手法と理論に裏打ちされた数字。片品村ならではの黄金律が隠れていたのです!
■遮光
アジサイ類は、遮光も大事。
うまくいくかどうかの成功ラインは「遮光率40%」だといいます。
遮光率40%て結構遮っているように思いますが、このくらい遮光しないとミナヅキは焦げてしまいますキョエ~!!
って、火は出ませんよ。念のため。
ガクが焼けてしまってきれいなピンク色にならないということです。
ところがだからと言って、遮光率を上げて光が届かなくなると、ガクがもろく、ふにゃふにゃに・・・柔らかすぎてしっかりとしないわけです。
「モヤシの原理と同じだいねー」と星野さん。
この40%も、たった3年前に結論付けられた数字。
10年前に始めたミナヅキの生産も、何とそれまでは遮光30%くらいだったそうです。ところが、太陽の活動が活発化した現在では、30%ではうまくいかなくなったのだとか。
「5-6年前から、“あれ?”と思い始めてね。30%と50%とトライしてみたけど、両方うまくいかなかった。我々にとっちゃあ1年に1回しかチャンスないし、気象条件も毎年少しずつ違うでしょ。やっと3年前に40%がいいということがわかったんだ」
このきわどいパーセンテージでうまく“遮光”されたミナヅキだけが、晴れて“社交”の場に登場するというわけです。
あはは、ダジャレマンめ、今回も登場したか。
■ライムライトの構造をチェック!
ライムライトやミナヅキは1株から15本くらい枝を立ち上げます。
“その気になれば”もっと立ち上げることはできるのですが、1輪のサイズが小さくなってしまうので、ちょうどよい大きさにするために15本という数字が◎
株が持っているエネルギーは5本立とうが10本立とうが同じわけですね。
そのエネルギーを5本で割ればそれだけ1枝に与えられるパワーが大きくなる。10本ならその分1本分のエネルギーが小さくなる。というだけの大変シンプルな理論です。
そして、私たちが思う“1輪”の構造はどうなっているのかというと・・・
じゃじゃーん!(ツボミの時点で見てみましょう)
1段に3輪小さい花序が出て、それが3-4段ある。
つまり小さな12輪が集まって大輪1つを形成しているわけです。
またその小さな一輪の花序は更に小さなガクの集まり。まさにスイミー的先方で圧倒的な存在感を演出しているのです!
■高原栽培
片品村の枝物生産者さんは、標高700-1,000メートル周辺で栽培しています。
星野さんのところも夜温は真夏でも15度くらいまでストン!と落ちます。
あ~、高原だなぁ(´∀`)・・・全く以っていい所です。
夜温が下がれば、昼暑くてもそれだけ植物もゆっくり体を休められるので、株がしっかり出来上がってきますし、色も載るようになってきます。
なるほど、このクオリティは高原という片品村の特性を生かして作られているのですね。
■星野さんにとってアジサイの魅力は?
「製品になるまでどんどん表情を変えていくのが魅力だな。
ライムライトであれば緑から白、白からピンク。ミナヅキは白から緑、緑からピンク。アジサイの別名を七変化っていうけど、本当にその意味がわかるよ。」
そうです、皆様も良くご存知の通り、アナベルやこれらのミナヅキなどアジサイ類は一見花に見えるこの部分は実はガクなのです。
本来の花は、小さくて大変観賞価値が低く、花期もすぐに終わってしまいます。色が変化して様々な表情を見せるのは、このガクの部分。そのままドライにしても形を保ち続けます。
あ!このあたりは既にピンクがかっています!
大きな三角形ができてから、ピンク色になるまでなんと2カ月くらいかかります。ここがほかの花きとは違うところ。気長に色の変化を待ち、出荷まで大切に育てないといけないのです。
確かに、星野さんは気長で優しそうなお顔をしていらっしゃいます(*^-^*)
「アジサイ類は水がなくても長い間持つもの。だから1本単価が一見高いと思っても、実は長い間楽しめるから、決して高いものではないんだよね。だから買って長く使ってほしい。
ちなみに水揚げは外側の厚い皮をむいて、タコ足に割くといいよ」
と、星野鉄郎の親戚ではない星野一郎さんは消費者の皆さんにメッセージを送ります。
これからの季節は、同じミナヅキでもグリーンではなく目が覚めるほど鮮やかなピンクに色づいたミナヅキが登場します。是非片品のピラミッドアジサイをお楽しみください。
・・・JA利根沼田 片品村支店 後編に続く・・・
(後編は、アナベルの桑原ゑみ子さん、秋色アジサイの石橋範明さん、そして、片品村の格言です!)
2011年2月25日
vol.82 丸福清花園(香川県)
花桃特集、第2弾!
今回やってきましたのは、羽田からびよ~んと飛んで香川県。
香川県の人口約100万人、うち高松市の人口42万人。・・・だいぶ集中していますね。
皆様ご存知でしたでしょうか、高松とはその名の通り松生産のメッカなのです。
高松は盆栽に使われる錦松発祥の地で、現在でも全国生産の約8割がここ高松産のものです。
←松生産の圃場
香川といえば讃岐うどんとイメージを直結させてしまいますが、しかしこの花業界では別の方程式がございます。
松ではありませんよ( ^ー゜)b
香川から出荷される花桃(以下モモ)を忘れてはなりません。香川県で花桃の生産といえば、丸福清花園(まるふくせいかえん)さんです。香川県高松市国分寺町にあり、香川県の中心寄りに位置しています。
丸福清花園さんは、高松市街から20分、高松空港から25分のところにあり、徳島、高知、愛媛にもそれぞれ1時間で行けてしまう大変利便性の良い立地にあります。
こちらは、丸福清花園第2代目の現取締役会長の福家義哲(ふけ・よしお)さんです。
う~ん、“福の家”だなんて、なんとも縁起のよさそうなお名前
なんと福家さんは大学をご卒業されてから10年間、皇居警察に勤務、現在の皇太子様が幼少の頃、護衛についていらしたという業界でも特異な経歴をお持ちの方です。
そもそも戦前は地主さんで900坪の庭木から生け花用に木を切って、生け花の先生方に提供していたそうです。
これを当時“切り出し屋さん”と言い、戦前はこれが結構盛んだったそうです。
ところが昭和48年、お父上である初代の福家行雄さんが枝物で農業を始められるということで、義哲さんは10年務められた皇居警察を退職され、御実家に戻り就農されました。ちょうどこの設立のときに義哲さんの奥さまのお腹にいたのが現在の代表取締役社長の耕也(やすなり)さん。
丸福清花園3代目。
生まれたときに「この子は生まれながらに就農するから頑張ってやってもらうように“耕也”」と命名されたそうです。現在の耕也社長はまさに丸福清花園の歴史とともに成長されたのです。 そのような経緯で福家家3代に亘り枝物生産に取り組まれている丸福清花園の知られざる生産現場を探ってまいりましょう!
原点とコンセプト
ある日、小さな子が入院中のおばあちゃまに “桃の節句やし、モモの花でも買って届けて、早く良くなってもらおう” とお店に行ったら、桃の節句直前だというのにモモの花がなく、泣きながら帰ったという話を行雄さんが聞きました。
昭和50年代当時、枝物の消費の中心は生け花用だったので、現在とは違い店頭で一般向けの桃は3月3日を目前にして、既に売り切れていたのです。
ショック・・・(+_+)チーン!
当時、全て生け花用として130cmのみを出荷していた行雄社長は、小さな子にこんなに残念な思いをさせてしまい、規格外の短いモモを捨てるのは忍びないと、地元国分寺町の園児約500人にモモの無償提供をを始めました。
すると、園児たちは小さいながらも字を書くことができて、多くのお手紙をもらったそうです。
その内容はついつい笑ってしまうものから、目頭が熱くなるものまで・・・
「飾ったら、となりのポチが見に来ました」
「家に持って帰ったら、ママが涙を流して抱きしめてくれました」
などなど、たくさんのかわいくて温かいお手紙を壁に貼って、子供たちの気持ちを受け止めました。
それを指さして当時の行雄社長が
「義哲!見てみぃ」と。
義哲さんの胸にこみ上げるものがあったといいます。
このことが丸福清花園さんが「普段使いの枝物」を開発する原点となったのです。
ところが、“モモの後片付けが大変だから・・・”と一部の園児の父兄から無償提供に関するご意見がありました。よかれと思ってやったことではあったのですが、それが善意の押し売りであったと思うようになりました。
そこで、行雄さんは「子供たちは求めているのだからと寄付ではなく、欲しい人が手に入れられるようにすればいい」とMSブランドを立ち上げることにしたのです。
こうして生まれた丸福清花園さんのコンセプトは“脱生け花の枝物”。
生け花用や特別の日のための枝物ではなく、消費者の皆様に日々楽しんでいただくための枝物を提案、供給していくことです。
最初に取り組んだスーパーでの販売で評判がとても良かったため、生け花ではない日常花としての産地作りが始まりました。
今では日常花としての枝物生産の専門性をより高めようと、品目を特化して栽培を進めています。
記録 ~「OTAへの出荷が始まる」~
福家さんは昭和58年以来約30年間、経営や生産に関することを毎日欠かさず記録していらっしゃいます。
これらの本はすべてその記録!w( ▼o▼ )w オオォォ!!
何かの辞書かと思ったら、福家さんの日誌だったとは・・・。 この記録には、●月●日に何があったらから東京市場に出荷しようと思ったなど、行動に至るまでのきっかけや思考回路など全てが記録されています。
「1999年2月8日、 OTAへ出張。◎◎さんとお会いして現物をお見せしたら1ケース送ってと言われ、送ってみた。するとXXフラワーの△△さん、YYYフラワーショップの▲▲さんから “他のものと全然違う!あるだけ全て送って!”と言われ、出荷スタート。」
当時、大阪のマーケットで「子供の成長を祝う桃の節句に、枝の先を切ってあるモモを販売するなんて何事だ!」と返品になったことがあったそうです。もちろんその商品は丸福清花園さんのものではありません。しかし、そのようなことが当たり前に起こることを知っていた福家さんは、1999年2月8日上京した際、東京に流通しているモモの枝先を見て、自分の商品も東京で勝負できると確信しました。
この記録簿は丸福清花園さんの歴史を語ります。
日々の弛まぬ地道な努力の上に築き上げられた真髄の結集です。
「モモの産地は確立するまでに時間かかるでしょ」という義哲さん。
比較的生長が早い草花に比べ、生長が遅く、特殊な技術を必要とする枝物は、一朝一夕に産地を形成できるものではありません。だからこそ、こうして記録を残し、後世に引き継ぐのです。
記録することって、大切なのですね。
風邪ひき×ピチピチピーチ
前回のウンチク探検隊で、モモの花色が紫がかることをブルーイングというと申し上げましたが、丸福清花園さんでは通称「風邪ひき」と呼んでいます。その原因の一つに生産者が出荷までに長い時間抱えてしまい、促成に時間がかかってしまうパターンがあると考えます。
市場ではきれいに見えても、消費者の皆様のお手元に届くときは“発症”して風邪はマックス。
「若い花が欲しい人に対して、おばあちゃんをどうぞと言っているようなもんやで」と福家さんはいいます。
確かにおばあちゃんが欲しい人にはおばあちゃんをお勧めすればいいのですが、モモちゃんの場合は受けたストレスレベルが低くて、若いピチピチピーチがいいのですやはりモモですから。
他産地では普通1週間から2週間促成する一方、丸福清花園さんでのところでは促成期間は2月なら20時間から30時間。
1月でさえもどんなに長くても4日まで。高い技術で短時間で促成し、速やかにピチピチピーチちゃんを出荷するのです。
規格再編
このような経緯を経て、消費者の皆さんに日常楽しめる花として提案していくために、大田花きの担当者とミーティングを重ね、主にサイズと入り数の2点から規格を見直しました。
以前 → 現在
120cm L (100本) → 2L(60本)
100cm M (200本) → L(120本)
80-75cm × (ナシ) → M(100本)
70-60cm MS(400本) → S(500本)
これが丸福清花園の日用の花としての提案型販売です。
日本一小さい面積
都道府県別でいくと香川県は日本一小さい面積になります。
私たちが小学生のころは大阪府と習ったものですが(世代がばれてしまいそうですが)、1988(昭和63)年、国土地理院が面積の算定法を見直した際に岡山県との県境にある井島がどちらに所属するのか不明瞭との判断から、香川県の面積から差し引かれ日本で最も小さい県となりました。
更に大阪府には関西空港ができたことにより面積が埋め立てられ広くなり、香川と溝を開けられ、たとえ井島の面積をプラスにできたとしても、日本一小さい面積というポジションは不動のものとなりました(!)
しかし、香川県は全国でも有数な農産物の生産地。限られた農地をフルに生かして効率の良い栽培を行います。
もちろん丸福清花園さんも例外ではありません。こちらの圃場をご覧ください。
「これモモですか?」(゚o゚ )と突っ込みたくなるような高さだと思いませんか?
株と株との距離およそ150cm。
普通、桃の木は高さ3mくらいになりますが、福家さんのところではこのように低木に仕立てて密植しています。この生産方法は限られた土地の中で少しでも効率良く生産するために考えられた方法です。
このサイズで株を作り上げていくことによって、MSサイズを作りやすくなります。
これぞコンパクトでありながら、高品質のエッセンスをギュッと凝縮させた商品を作る秘技なのです。
もう一つ秘技を教えちゃいましょう!(≧∇≦)
実は、 水田と畑を利用して栽培しています。
皆さん、水田ですよ、スイデン!通常お米を作るところでモモを作っているんですよ!
水田で樹木を栽培しようとすれば、普通は根腐れしてしまいます。香川のこの乾く土地だからこそ必要に応じて溜め池から水を引いてきて、水分量をコントロールすることができるのです。
↑こちらは梅の生産圃場ですが、水田を活用している様子がよくおわかりいただけるかと思います。
【豆知識】
香川のことを「讃岐(さぬき)」といいますが、これは「通り抜ける(=さぬく)」が語源であることを義哲さんが教えてくださいました。昔からこの辺りは瀬戸内海を抜けるには必ず通らなければならない所で、瀬戸内の要所として発達してきました。
小さいながらも大きな機能を果たしてきた場所なのです。
('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*)ウンウン
日本の地中海
香川県は瀬戸内海式気候で地中海性気候と似ていると言われます。(なんだか香川ってアジアのナポリみたいだ~!)
似ているといっても日本ですから梅雨があります。しかし梅雨が明けると50-60日間は雨が降らず、更にここ福家さんの周辺は高松市でも内陸にあるので最も雨が少ないところの一つ。
この気候条件がまたモモの栽培には適していて、デリケートな花芽が形成される7-8月に雨が少ないということは、それだけ多くの花芽を付けることができるということなのです。
地中海性気候だけあって、地中海沿岸の特産であるオリーブがここ香川でも特産となっています。県木としてもオリーブが指定されていて、福家さんのところでも切り枝用のオリーブを栽培しています。
こちらのオリーブは超有名な某報道番組のスタジオに装飾された福家さんのオリーブ。
もうこうなったら香川の海が地中海の輝きに見えてきちゃいます。 ←見えますね( ^ー゜)b!
エシカル生産
エコ消費とかエコ活動など今まで社会のキーワードは「エコ」でしたが、ここから時代は流れて現在のキーワード“エシカル”(=ethical,倫理的な)になっています。社会貢献的活動を指す時に使います。
昨今あった伊達直人を名乗るタイガーマスク運動はまさにエシカルブームの一端と言えるでしょう。
丸福清花園さんも日頃からエシカル生産に取り組んでいらっしゃいます。但し、ブームではなく、福家さんに倫理的価値感に基づいてしっかりと定着しているものです。
ポイントは以下の通り。
① 有機リン系の農薬は一切使用しない。
その他の農薬も一切使用しません。モモにつきやすい害虫はヒメシンクイガという小さな虫です。農薬を撒けば一発バイバイですが、農薬は天敵も害虫も全ての虫を一気にやっつけてしまいます。
しかも同じ期間で害虫は5サイクル(5回繁殖期を迎える)に対し、天敵は2サイクルと、害虫の方が繁殖のサイクルが早いので、殺虫のために農薬を使い始めたら農薬ばかり使ってしまうことになるのです。
そこで、福家さんは農薬の使用を一切やめて、春先(シーズン終了後)に石灰などからできた天然の薬剤を株にコーティングします。
以上!
え?「以上」って??それだけ??
そうです。この薬剤はモモの株自体が病気になってしまったり、病虫害に遭うのを防ぐためのもので、もうホントこれだけ。
「虫は自然任せだよ」とさわやかスマイルの耕也さん。
皆さん、普通ありえませんよ、こーゆーのッ!
どうしてこれだけでやっていけるのでしょうか。
② 交信撹乱材(コンフューザー)の使用(していた)
「コンフューザー」とは商品名ですが、ヒメシンクイガのメスと同じフェロモンを出す装置で、これに交信を撹乱されたヒメシンクイガの雄が交尾ができず、産卵させないようにするものです。εε(@_@)33
こちらがそのコンフューザーです。
モモの枝先にこのように付けます。↓ 既にモモの枝は切ってしまっているので、今回は仮に桜の枝に付けていただきました。(う~ん、曇天)
しかしコンフューザーにも弱点があります。
弱点その1◆ コンフューザーはヒメシンクイガをターゲットとしているため、これを使うと、ヒメシンクイガばかりが減って、逆に天敵が増えすぎてしまいます。 天敵はジョロウグモ!
↓こちらの方です。
桃園(ピーチガーデン♪)をヒメシンクイガから守るために活躍してくださいます。
(イメージ写真)
コンフューザーに頼っていた時は、ジョロウグモが増えすぎたために、枝と枝の間には向うが見えなくなるくらいぎっしりとクモの巣が張っていたのだとか。
(イメージ写真)
良く見るとそこにヒメシンクイガの成虫がたくさん引っかかっているのだそうです。
これぞ天然の“ヒメシンクイガホイホイ”ですな。
弱点その2◆ コンフューザーが出す“フェロモンもどき”は空気よりも重いため、下の方に沈殿します。
ヒメシンクイガは枝の上の方を飛ぶので、高い枝に対しては効果を期待しにくいのです。
弱点その3◆ コンフューザー購入のコストがかかります。必然的に単価に反映せざるを得なくなります。
そこで!( ^ー゜)b 圃場での自然の生態系のバランスを整え、今やコンフューザーもほとんど使用しないところまで作り上げました。丸福清花園の圃場では、農薬を使わないので天敵(ジョロウグモ、テントウムシ、ハチ、カマキリなど)が自然に増えます。
そうすると彼らがヒメシンクイガを食べちゃってくれるのです。(*^^)vイェイ!!
「バランスを保ってやることが大事」という耕也社長。
これはまさにモモを生産しながらビオトープを作ってしまったということですね。
これぞまさに桃園のビオトープ なんて素敵な響きでしょう(≧∇≦)
「モモは桃の節句に飾るものだから、小さいお子さんがかわいい頬にモモの花をあてるかもしれないし、誤って口に入れてしまうこともあるかもしれない。 そのようなことを想定しながら、農薬は使わず、堆肥を入れたり草刈りを一生懸命する。
わたしらのモモは桃花酒用の浮かべるモモとしても使ってもらっているから、安心安全の商品なんだ。
劇薬を使わないことで、私たち自身の体を守れる。消費者の安心安全を守る。そして、この栽培方法によって環境を守ることができる。 このようなエシカル生産を心がけているんだよ」
福家さんの観賞用としてだけではなく、桃花酒に浮かべるモモにも使えるといいます。そのくらい安心安全なモモなのです。 これらの生産ノウハウをまとめると、香川県ならではの特徴を生かしたもので、なかなか他県には真似できないものなのです。
ここに福家さんの栽培技術、ふかしの技術が加わると魂が吹き込まれたふっくらと優しいモモが出来上がるのです。
咲いた咲いた ~ふかしの技術 秘密の花桃
~ 桃のお節句が五節句の一つとして制定された江戸時代、旧暦を採用していましたから当時の3月3日は現在の4月中旬ころに当たります。
しかし、現在の3月3日では戸外のモモはとても開花していません。実際に消費者の皆さんがご購入されるのはそれより1-2週間前でしょうから、それまでにかわいらしい花を咲かせようというのはやはり特別な技術が必要となってくるのです。
ここからはオフレコですよ、読者のみ・な・さ・ん♪
って言ってもうてるやないかい!ヾ(・ε・;)オイオイ
でも、ちょっとだけよ~ん^~^!
一般的には、モモを吹かす際は室温25度、湿度80-90%で調整します。しかし、福家さんの場合は、室温はもう少し高い●●度(あ、読めない!)、逆に湿度はもう少し低い●●%(あ、読めない!)前後で調整します。
冬場の外気は乾燥するので、輸送中のショックを控えるためにこうしているのです。保温庫に入れるときも急にこの条件にするのではなく、段階的に設定していきます。
←保温庫内のヒーター
保温庫に入れてからは、2月なら20-30時間以内で促成加減を見極めて出荷します。先にも申し上げましたが、促成に1-2週間かける他産地と比べるとすこぶる短い。
たびたびすみませんが、普通ありえませんよ、こーゆーのッ!
ここにもやはりこだわりがあり、長く入れていると“風邪ひき”を起こしやすくなるので、3日で出荷できるノウハウを獲得したのです。
開花ステージを揃えるのも技術の一つ。誰から教えてもらったわけでもなく、丸福清花園さんで試行錯誤、研究された上で培った独自のノウハウです。この技術を持っているかどうかが、お客様が買って楽しめる花か、それともすぐに散ってしまう花かの分かれ道です。
福家さんの桃園はまさに「秘密の花桃」。マジックをかけられたかのように、最期まできれいに咲き切る福家さんのモモをぜひ一度お試しください。福家さんの試行錯誤はまだまだ続きます。丸福清花園さんはこれからも進化します。
ニセモノ・アケボノ・アラワル!∑(゜◇゜;)
これだけこだわりを持って試行錯誤を重ねて作り上げた福家さんのモモは本物。とりわけ福家さんが栽培している「曙」というのは、福家さんの育種品種です。
従来品と矢口という品種を交配して、選抜に選抜を重ねて誕生しました。 発色が良いばかりではなく、水揚げが良く、ストレスに強いのが特長です。
その名は『枕草子』の冒頭部分から引用しました。
「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」
(イメージ写真)
まさに春の到来を告げる花にふさわしい名前ですね。これも家庭花として使っていただきたいという気持ちから付けられたものです。
↑こちらが福家さんが出荷されるときに使用する丸福清花園ブランドの箱です。
こちらをご覧ください。
丸福清花園さんはその「曙」の名前で商標登録をいたしました。花桃で「曙」という商品は、その名前そのものが丸福清花園さんによる良い花桃の印、まさに品質保証の証なのです。
曙は商標登録された商品ですから、権者(この場合は福家さん)が許可しない限り、花木などにその名前をつけて販売してはいけないのです。
ところが・・・!こちらは某生産者から出荷された商品。
「花桃 あけぼの」とばっちり書いてあります。
(; ̄Д ̄)なんじゃと?
ひらがなで表記されていたとしても、同類とみなされ違法行為となります。
耕也社長「(ニセモノは)咲きムラがあるでしょ。つぼみが固かったり花が散りそうなまでに咲ききっていたり。しかもこれは風邪まで引いている。ふかす技術が全く未熟な人の商品やわ」
ホント!ご覧ください、この差!左側が福家さんのモモ(ふかす前のものをお借りいたしました)で、右側がニセモノ。よく見ると枝の色艶も花の付き方も全然違いますし、芯(枝の先)もヒメシンクイガに食われ、黒くてボロボロしています。
福家さんのモモは1年生のピチピチピーチですから、右側ほど肌が黒くなることはありません。
また、1本の中で開花ステージに大きな差があることもお分かり頂けると思います。
(こちらはニセモノアケボノ↓)
福家さんのモモはつぼみのステージがきちんと揃っていて、芯(枝先)まで花が付いています。
このように・・・↓
(写真は両方とも福家さんのモモです)
こんなにも品質に大きな差があるのですね。 気軽に農業に取り組むのは良いことだとしながらも、福家さんが心配されるのは他産地から出荷された曙を買って、買ったとたんにすぐ散って、消費者ががっかりしてしまうこと。
「曙に対する信頼もなくなりますし、消費者の花離れが起きてしまう」と危惧します。
福家さん、とりわけ社長の耕也さんはこの件に関しリアクションは起こさないとおっしゃいますが、悪気がなくても福家さんの許可なく花桃を“曙”と名乗って出荷するのは違法となりますので、何卒ご注意ください。
「あけぼの」「アケボノ」「AKEBONO」など、どのような表現をしても同様です。
生産者の皆様、どうぞ宜しくお願い致します。
モットー
「瀬戸内海の太陽をの光を十分に浴びて、力強く育った新鮮な枝物をいち早く届けるのが私たちの仕事です。
つまり植物の生命力を精いっぱい引き出して、“生命の具現化”をすることです。
これが“つくり屋の本質”です。
子供がコップに水道水を入れて飾って十分というのが私どもの目指すところです。」
そういう義哲さんのお言葉には力強さが感じられます。
このようなモットーから丸福清花園さんは前処理剤を使用していません。
それなのに、丸福清花園さんのモモは全て咲き切ります。まるでマジックをかけたかのように。
枝物でありながら、前処理剤も使用せず、コップ一杯の水で咲き切る桃って、普通あり得ませんて、ホント。
讃岐うどんから学ぶもの
初代からの教えは「木を見、木に聞き、木に学ぶ」。
高品質の枝物を栽培し、需要家の皆様に提供することにより花文化の発展に貢献したいという思いから、「現場を離れることなく常に生産に注力すべし」という社是ならぬ、園是です。
ところが昼食でうどん屋さんに行ったとき・・・(そうです、香川の方はほぼ毎日うどんなのです。香川に行って初めてその気持ちを理解し、おいしいうどんに恵まれることの幸福感を共有しましたが、そのお話はまた別の機会に)・・・香川において多くのうどん屋さんはセルフサービスになっていて、極めて効率的に振舞うスタッフの行動や厨房の向こう側できびきびと動く人たちを義哲さんは、じーーーーっ(-.-)と観察しているのです。
そして発した言葉は・・・ 「讃岐うどんのこのサービスのシステムは究極のサービスなんだよ」
さすがアンテナがお高い。
「お客様を満足させるのはどうしたらいいかを追究し、自分たちの作業の無駄を省き、安くておいしいものを素早く提供する。
その中には“茹で置きをしない”などのこだわりもあるんだ」
確かに、香川のうどん屋さんはどこも“安くて、早くて、おいしい!”の三拍子が揃っています。なんとなく通り過ぎそうになったポイントでしたが、福家さんのご指摘で勉強させていただきました。
観察すべきは木のみならず、生活のすべてに及ぶのです。
父から子へ
義哲さんは皇居警察にお勤めでしたが、実は義哲さんのお父上の行雄さんも警察学校の教官でした。それはそれは厳格な方だったとのことです。
福家行雄さん
耕也さん、生まれながらに就農するとされてお名前までそのように付けられましたが、就農を決心される際に心理的な抵抗はありませんでしたか?
「全然ありませんでした。小さい頃に“自分は大きくなったらこういう風になりたいな”と思っていた通りに今なっているよ」
スゲッ!
すごいですな。自己実現です。
義哲さんは「息子が“学校卒業したら、農業継ぐけんなぁ・・・”と言ってくれたときは涙が出るほど嬉しかったよ」と振り返ります。
義哲さんの奥様は生け花とお茶の師範代、若奥様はNFD1級のお免状をお持ちで、お花屋さんご出身。
内需の功、いや、それ以上の戦力となっていて、彼女たちのお陰で利用者目線で品質管理や総合チェックができる仕組み作りができているのです。
出荷作業においては実際に女性の鋭いセンスと仕事の緻密さを必要としていて、現場では女性が活躍しています。
耕也さん「まだ私で3代目。枝物の産地は出来上がるまでに時間がかかるでしょ。3代目なんてまだまだ若い方です。
5代6代目くらいにならないとね。そのころにはお客様から絶大な信頼を得られる産地になっていたいですね。 “丸福清花園なら絶対安心!”てね」
将来脈々と受け継がれるであろう香川の枝物産地を築いく一世代としての責任を全うします。
「東京に3代住んだら“江戸っ子”といえる」と言いますが、枝物3代はまだまだだなんて、厳しい世界ですね。
丸福清花園に流れる哲学
農業を始めるときに、義哲さんは先輩に「お前、貧乏するぞ」と言われたといいます。でも義哲さんは次のように思いました。
「貧乏結構、たとえ貧乏になっても俺はやる!農業で儲けようなんて思ったらあかん。
農業は人々の生活の原点やから、それをやろうってことは自分は貧乏でも、社会にきちんとしたものを供給するということや。
例えば人の役に立って、お金をいただいたとしても自分はミニマムの生活をする。
さもないと大競争時代には戦っていけない」
そして、故行雄社長には次のようなことを耳ダコができるほど言われたことだそうです。
「質素で慎ましい生活態度で他人の倍働きなさい。それが良いものをより安く提供するということです。
それがものづくりたる農業の本質である。これを守ってこそ大競争時代に生き残っていける。世の中の基本を支えるのは農業なのだから」
他産地がどうこうよりも、自分の人生をかけて農業をやっているわけですから、この思いをお客様に伝えるまで。今は農業をやっていて良かったと思うと義哲さんは言います。
人の倍働き、慎ましい態度でミニマムの生活を送るとは、つまり清貧の思想というか、“足るを知る”ということでしょうか。これぞ福家さんのフィロソフィーです。
丸福清花園の格言
・ 瀬戸内海はアジアの地中海ィ~☆
瀬戸内式気候(温暖でドライな気候)を生かして、高品質を生み出すべし。
・ 地域の特性を生かし、日常用のコンパクトな枝ものはコンパクトな土地で効率良く栽培すべし。
香川の面積を侮ることなかれ!
・ 消費者の皆さんに日々の生活として楽しんで頂ける枝ものを志すべし。
目指すは枝物の脱生け花。
・ 農業は自分を守りつつ、延いては消費者を守り、環境を守るべし。
圃場では自然の生態系を作りエシカル生産を実現すべし!
・ フィロソフィーを持ち、貫徹すべし!
・ 現場を離れるべからず。
「木を見、木に聞き、木に学ぶ」作ることにエネルギーを注入せよ!
福家義哲さんご夫妻と福家耕也さんご夫妻
消費者の皆様へひとこと
・ 日本の地中海でできたモモを最期まで楽しんでください。
・ 咲きムラのないもの、枝肌が若くてきれいなもの、風邪ひきを起こしていないピチピチピーチを選んでください。
・ 丸福清花園さんはモモだけではなく、ほかの枝物も出荷しています。
しかし、より専門性を高めるために、その時期その時期にひとつの出荷品目に特化しています。
花桃の次は啓翁桜です。夏になればオリーブ、七夕金明笹、秋には実付きオリーブなどが出荷されます。
花桃だけではなく、是非福家さんの種々の枝物を使ってみてくださいませ。
<写真・文責:ikuko naito@hanaken>
2011年2月11日
vol.81 吉忠(よしちゅう) 神奈川県川崎市
“灯りをつけましょ ぼんぼりにぃ~
お花をあげましょ 桃の花ぁ~♪
五人囃子の笛太鼓ぉ~
今日は楽しいひな祭りぃ“
ホント、日本には良い童謡がたくさんありますね!
そう、もうすぐひな祭りです!
ひな祭りの発祥についてご存知ですか?
発祥は古代中国で、3月に行われていた“身の穢れを清める行事”に由来します。この行事を3月最初の巳(み)の日に行うことから「上巳節(じょうしせつ)」と呼び、日本へは平安時代に入ってきました。
ですから今でもひな祭りのことを「上巳(じょうし)の節句」とも言います。
どうしてこれが“桃の節句”と呼ばれるようになったか。
現在ではひな祭りといえばひな人形を飾り、白酒、菱餅、ハマグリのお吸い物などで祝うのが一般的ですが、その発祥の頃には、川上から盃を流し、自分の席に流れ着くまでに歌を詠む「曲水の宴」が催されていました。その際にモモの花を添えて白酒を飲んだことから桃の節句と呼ばれるようになりました。
平安時代に日本に伝播後、室町時代には貴族の女児たちの人形遊びである「ひない祭り」と一緒になり、ひな祭りの原型ができました。中国ではモモがその花の明るさから冬の暗さを追い払ってくれる神聖な木とされてきたこともまた、女児の成長を祝う行事に使われている所以です。
やがて安土・桃山時代には貴族から武家社会に伝わり、江戸時代になると庶民の間にも広まっていきました。時代とともに「お祓い」の意味は薄れましたが、江戸時代に五節句の一つとして制度化されました。ひな壇のほかにモモの花を飾るなど、現在のひな祭りに近い形になったのも江戸時代です。
【まめ知識】
① ひな人形を片付け遅れるとお嫁に行き遅れると言われる理由
ひな祭りにひな人形を飾りつけるご家庭も多いことでしょう。しかし、そのひな飾りも3月3日を過ぎたら速やかに片づけないと「お嫁に行き遅れる」とよく言われます。
それはもともとひな祭りの原型がお祓いの意味を持っていたように、ひな人形に自分の身代りとして身の汚れを託し、川や海に流していた風習に由来します。昔は藁や紙でできた人形だったので惜しまず川に流すことができましたが、ひな人形が豪華になるにつれ川に流すわけにはいかなくなり、代わりにすぐ片付けることによって厄を流すとみなしたのです。お節句が終わってもひな人形をそのままにしておくということは、つまり厄を落とさずに放置しているということになり、「お嫁に行き遅れる」と言われるようになったのです。
② ひな祭りに飾る菱餅の色は何でしょうか?
正解はピンク、白、緑の3色!
ではこの3色が意味するものをご存知でしょうか。
それは白が象徴する雪が溶けて、大地から草(緑)が生え、桃の花(ピンク)が咲く事象を表現したものなのです。
この色の組み合わせはまさに春の象徴そのもの!直線的な菱餅の中に、温かく柔らかい春到来のストーリーが流れていたのですね~。
また、ピンクは「魔除け」、白は「清浄」「清純」、緑は「邪気祓い」、菱形は心臓を表現し、女児の健やかな成長を祈るという意味もあるようです。
なんとも奥が深いではありませんか。
今回のウンチク探検隊も奥深さでは負けていませんよ!
はい、もうお分かりですね。(だいぶ前置きが長くなってスミマセン^_^;)
今回はひな祭りを象徴する花であるモモの生産ウンチクについてお伝えいたします。
皆さん、不思議に思ったことはありませんか??
旧暦の3月3日は現在の4月中旬ころにあたります。現在の4月中旬ころはモモは満開ですが、3月3日では戸外のモモはとても開花しません。
ではどうしていたのか。
明治時代、新暦に改められた当初は梅の花を代用したり、遠く南国からモモの花を運んだりしたようですが、関東の花農家さんたちは色々と工夫を凝らし、地面に穴を掘って室(むろ)を作り、ここで麦糠(ムギヌカ)などを発酵させ加温し、小さなつぼみの付いたモモの花を枝を入れ、早く咲かせたのです。
この方法は大正時代に全国に普及し、現在はこれを元に改良された加温方法で花を咲かせて出荷します。
う~ん、たった“触り”を聞いただけでもモモの生産ウンチク、なんだか面白そうです!
モモの生産といえば、関東では何と言っても川崎市馬絹(まぎぬ)の吉忠(ヨシチュー)さんをおいては語れません。大田市場から車で1時間足らずのところに位置しています。
お伺いしてみると、何と意外にも閑静な住宅街。
「馬絹」といえば東京市場の枝物の大産地でしたが、今では便利な立地に伴う宅地化の波により、実際の圃場は郊外に移転している産地さんも多いのです。圃場は郊外、作業場は馬絹というパターンが多いようです。
こちらは吉忠4代目の吉田恵一さん。早速今でも馬絹にあるモモの畑に連れて行っていただきました。
・・・が、やっぱり花は咲いていない(-.-)
もう桃の節句まで1カ月もないというのに。
咲きそうなつぼみすらない。まだまだ固い。
恵一さん、こんなにカチンコチンなつぼみで、ひな祭りまでに間に合うのですか??((б_б;)ドキドキ)
どうやって間に合わせて出荷しているのですか?
「ふかすんだよ」
ふかす?
「そう。室(むろ)でふかすんだ。そしてつぼみを大きくして出荷するんだよ」
「ふかす」とは、切ったモモの枝を温かい室に入れてつぼみを大きくして、出火前に開花調整をすることです。早速その室を見せていただきました。
「こっちの室は今使っていないんだけどね、昔の室だよ。入ってみる?」
とおもむろにふたを開け始めたのは、出荷場の地下室(ちかむろ)。
ギョギョッ∑(゜◇゜;) !!!
ヘビとか出てきませんか?
「ヘビはいないよ」と笑いながら一蹴する恵一さん。
せっかく重いふたを開けてご案内いただこうというのに、これは失礼いたしました。
この下にはどのような世界が広がっているのか。なんだか川口浩探検隊(古すぎる?)に参戦しているかのような恐怖心と好奇心にかられます。
1段1段が意外と高い。
一歩一歩、恐る恐る地下へ歩みを進めます。一段下るたびに気温と湿度が上がっていくのを肌で感じます。
先に下りた恵一さんが室を明るく照らしていてくださいます。
この先にはどんな世界が・・・?
「こっちだよ」
ピカーン!
な、な、なんとこれが噂の室ですか。なんとも秘密の基地的。
気温は・・・16度ですか。(取材日にはこの室は使っていませんでした)
外気温が10度にも達しないこの時期は、とても温かく感じます。
明治の新暦への切り替えをきっかけに作ったものです。生産者によっては防空壕を使ったりすることもあるようです。
このように地下にある室のことをそのまま地下室(ちかむろ)といい、一方地上にある室のことを岡室(おかむろ)といいます。吉忠さんは今は岡室をメインに使いますが、繁忙期もピークを迎え、岡室だけでは商品が入りきらなくなると、今でも地下室を使うこともあるのだそうです。
岡室はこちら。
岡室の扉↓
こちらの室で、気温は25度。
ホント、室の中でふかせたものは、つぼみが赤く色付いてきています。
それにしても真冬の寒い中、昔の人は麦糠だけで本当に25度にも保っていることができるのでしょうか。
「できるよ。麦糠(むぎぬか)を発酵させるんだ」
とご説明くださったのは、一代遡って吉忠3代目の吉田義一(よしかず)さん。
おっと、ここで日本の枝物界の重鎮登場です!
(業界の方程式 吉田義一さん=泣く子も黙る枝物の革命児。でもご本人はいつもニコニコ)
麦糠ですか・・・あまり聞き慣れませんが、米糠ではなく麦糠をご利用になる理由というのはあるのでしょうか。
「米糠はガスが発生しやすいんだよ。エチレンガスとかね。そうするとどうしてもブルーイングといって、モモの色が変わってきてしまう。ピンクではなく紫色っぽくなってしまうんだ。こうなるともう花も咲かない。
北風が吹く寒い時には室がちょうどいいんだけどね、南陽系の暖かい日には室ではどうしてもガスが発生しやすくなってしまうんだ。だから気温が上がりそうだなって思ったら、ちょくちょく室を見に行って、ふたを外して空気を入れ替える作業があるんだよ。外にいてもわざわざ戻って来て空気の入れ替え作業をするんだ。それは大変な作業だよ」
なるほど、陽気に気を使って、室内のコンディション調整に頭を使って、そして室に駆けつけるときは足を使う。
これは大変です。
「この発生するガスがなかなか油断ならないんだ。
昔はイモでも何でも収穫物を室に入れていたでしょ。だから、家の人が室に芋を取りに行って、ガスが発生しているのに気付かずガスを吸って倒れて亡くなっちゃったりすることがあるんだよね。今でもこの近所でもたまに発生する事故だよ。ガスが発生するとそのくらい有害なんだ。麦糠はそこまでじゃないけどね。だから危なそうな時は飛んで行ってすぐに空気の入れ替えをする。モモの出来の良し悪しは、いかに自分で陽気の変化に気づいて、室内(むろない)にきれいな酸素を取り入れるかにかかっているんだ。室の中のコンディションも大きく影響するんだよ。
麦糠を使った調整って大変でしょ(笑)。だから室内(むろない)の温度調整も、私の世代から電気ヒーターを導入したんだ。
それでも生きているものだから酸素が足りなくなってくる。だから今でもきちんと空気の入れ替えはするんだ。
やっぱり(モモは)生きているよぉ」
心で植物の生命を感じて、植物の良いコンディションをできるだけ整えるようにする。義一さんのお話を伺っていると、なんだか植物の声を聞ける人のようです。このような方のことを匠というのでしょう。
匠といえば、枝物こそ匠の技が光るもの。
枝の生産にはどのような技が隠れているのでしょうか。
「生産というより枝折り(しおり)の技術だよね」
シ、シオリ(゚o゚ )( ゚o゚)??
「そうそう、“枝が折れる”と書いて、枝折り(しおり)」
エダオリではありません。シオリです。シ・オ・リ。
ポキッといくわけではありませんので、くれぐれも。
「昔は“紙織る”って書いて“しおる”って言っていたんじゃないかな。
“枝折る”とは広がっている枝を折れないように柔らかく曲げて、コンパクトにまとめ上げるという技術のことなんだけど、枝を束ねるときに紐などで縛らずに、い草をよじるだけで止めるんだ。紙を“こよる”みたいにね」
枝折るのは、放射状に広がる商品の品質保護と運搬効率向上のためです。
「こうやって枝折ったものを昔は“い草”でこよって結わいていたんだよ」
い草ですか?あの畳のイグサ?
「そうそう。これを見てごらん。これがそのい草だよ。
これを使う前にお湯に浸して柔らかくしてから結わくんだ。そうすると乾いたときにしっかりと止まって外れない」
なるほど、それはしっかりと結わえそうですね~。
それにしてもどうしてい草なのですか。しかも熊本から取り寄せていらっしゃるのだとか?
「昔は“クゴ”を使っていたんだよ」
“クゴ”って何ですか??聞いたことありませんが。
(勉強不足ですみません^_^;)
「“クゴ”って草の名前。吉忠初代の吉田仲右衛門(ちゅうえもん)さんのときはクゴを使っていたんだ。海近辺の河口岸とかに生えている草でね、引き潮のときは淡水に浸されて、満ち潮のときは海水に浸されるんだ。これがちょうど九十九里浜辺りにあってね。採ってきて乾かして、使うときに濡らして使っていたんだよ。当時はこれが丈夫だとされていたんだ。この辺りの馬絹の生産者だけが使っていたんじゃないかな。
それが今は九十九里の川がきれいに整備されて、クゴが採れなくなっちゃったんだよ。
そこで私が考えたのがい草なんだ。
私が30代の頃だったかな。クゴが足りなくなったときに畳屋さんに畳の切れっ端をもらってやったら、ちょうど良かったんだよね。それで新しいものをもらって使ってみたら、編んでいないものの方がいいってことがわかってね。藁もやってみたけど、意外と使いにくかったんだよ。今でもワラを使っているところもあるよ。だけど、い草がいいと思って熊本から取り寄せたら、なんとクゴより安かったんだよ。
い草だからさ~、高いものだと思うじゃない。でも畳を作るときに出る副産物だから、安く出してくれてね・・・」
室の加温を麦糠から電気ヒーターに替えたことや、枝折るときにい草を使うことなど、現代の枝生産のノウハウも義一先生(!)が馬絹で確立しました。い草に目を付けるなんて、なんだか感覚にとても優れているんですね。センスがいいというか、目の付けどころが違うというか。
「枝折るときにはこのい草を湿らせて使うんだ。そうすると乾いたときにパリパリになってほどけない。
結ばなくてもキュッと止まるんだよ。枝にも負担が少なく、無理をかけないんだ。そして何より丈夫だね。全然切れない。
これを見てごらん↑。結んでいるように見えるけど、結んでいなくて、ねじって留めているだけなんだ」
ほんとだ。強く広がろうとする枝を撒きあげているのに、結ばずしてしっかりと留まっているではありませんか∑(゜◇゜;)
引き継いだものをそのまま守って継承していこうというより、変えていこう、改善していこう姿勢を強くお持ちの義一さん。
“これはどうしてこんなやり方しているのか?こっちのやり方でやってみたらいいのではないか?”というように疑問を持って、“なぜ?”を繰り返し、新しいものをトライして検証を重ねる。いつも良くしよう、少しでも経費がかからない方法でやってみようと試行錯誤をしつつ、ここ馬絹で枝物の生産体系を確立したのです。
それでいて、義一先生は全然偉ぶったところがないんですね。(いつもニコニコ、本当に良いお顔をしていらっしゃいます)
で、こうやって枝折ったものを以前はコモで巻いて出荷していました。このコモとは米俵の上に撒くもと同じものです。厚くて大きく見えるからと今でも使っている方はいらっしゃるそうですが、持てばお客様の服も汚れるし、逆に厚くて実際のボリュームを大げさに見せてしまうという心配があるので、お客様にとってはどうかなという部分もあるのです。
「ワラはセーターに付くと取るのが面倒でしょ。それに今となってはビニールの方が見た目もきれいだし、プチプチ(緩衝材)を使えばその分保温効果もあるしね。汚れないし、ちょうどいいよ」
見た目といえば、その「枝折る技術」も見た目が重要なのだとか聞いたことがありますが・・・。
「そうそう。この枝折りの技術の如何で市場での価格も変わるものなんだよ。そりゃあうまければ見た目もいいから、値段も上がる。」
どうやるのですか。
「まず1枝折りを作るでしょ。
1枝折りはこのくらい・・・“このくらい”を感覚で覚えるのも修行のうちだね!」
「だいたい3-5本の枝で1枝折りを作るんだ。こうやってね」
そして花の向きを片面に合わせながら1枝折り作り、それを4つまとめたものが1束で、これを表に向ける。
4枝折り × 3 = 1束(12枝折り)
横から見るとこうなっています。
次に1束の裏にもう1束合わせて、表裏どちらから見ても花が付いている状態にします。これを半丸といいます。
1束 × 表裏 = 半丸(24枝折り)
↑半丸を横から見た状態
そして、この半丸にもう半丸を付けて、表裏をなくし1丸(ひとまる)をつくります。“丸”はバケツの丸からきているようです。
半丸 × 表裏 = 1丸(48枝折り)
「吉忠さんの丸は芸術!」と絶賛されるほど華麗に仕上がるそうです。逆にそれほど熟練した技術が必要なものということにもなります。
またこれをセリ場で持ち上げて(持ち上げるのも大変な代物なのです!)買参人の皆さんにお見せするとそれはそれは美しいものだったのだとか(大田花き社員談)。
今では一度に大量のモモをご購入される方の少なくなり、1丸も量を必要としない買参人さんが殆どで、セリにかかるときは大きくても30枝折り程度です。
なるほど、この枝折る技術、束ねる技術に吉忠さんのノウハウが凝縮しているのですね。
「そうそう、モモがきれいに見えるも見えないも、この腕次第。昔はよく品評会でこの良し悪しを競ったものだったよ。
本当に手が疲れるけどね。枝折っている間はずっと手で握って抑えているわけだから」
この技術を習得して一人前になるまで、どのくらいかかるのでしょうか。
「そうだねー、この技術は研修で丸2年、地元に帰って3年の合計5年くらいかかるかな~。
腕が良ければやっぱり早くてきれいな仕事ができるからね。技術の習得が肝要だね」
義一さんはやはり習得が早かったのでしょうか。
「そうね、割と手先は器用だったな。自分で言うのも何だけど(笑)」
手を拝見してもよろしいでしょうか。
わぁー、職人さんの手をしていらっしゃいますね。
「いやぁ、もう今は全然きれいだよ。今は枝折る機械を入れたんだ。昔みたいに1丸もの大きいものは作らないし、い草も使わないし、便利になったよね。
でも昔は親指の内側から人差し指の側面にかけて割れるほど荒れていたよ。痛いし、カイジュウの手みたいに腫れてね・・・」
アタタタタッ(>_<。)イタイ!
そうだったんですね。義一さんの手を思えば、機械で枝折れるようになってよかったですね。
今でももちろん、注文があれば義一さんが腕を奮って枝折ります。
義一さんがモモをやろうと思ったのは20歳くらいの頃。
御祖父様にあたる初代吉忠の仲右衛門さん(当時60歳+くらい)を見習って始めました。
「“上手に作れるようになったな”と褒めれた時にはそれはそれは嬉しかったね~」(*´ー`喜)
そうですよね。全国の名を馳せる枝物産地のゴッドファーザーに褒められたわけですから。
そのゴッドファーザーは当時37人のお弟子さんを持っていらしたそうです。“ちょっと教わりに来ました”的な人を含めると、もう人数は分からないほどだそうです┌|◎o◎|┘スゴイ!
そんな御祖父様の背中を見つつ「おじいさんが頑張って作り上げたものを無くしてはいけない!」と決心されたのがちょうど20歳くらいで、枝物生産を始めたきっかけだそうです。
「当時は苦しい思いをして寝ずに働いたよ」
と回顧する義一さん。
そんな時代があったからこそ、今の義一さんがあるのでしょうね。
【吉忠さんが成し遂げたこと】
① 供給が難しくなっていたクゴの代わりにい草を利用し始め、継続可能な素材を利用し枝折りの技術を伝承している。
② 麦糠を電気ヒーターに替え、室内のガス発生を抑え、品質向上。仕事も効率アップ!
③ 初代仲右衛門さんや二代目一男さんから引き継ぎ、枝折る技術を確立。多くのお弟子さんに伝授し、日本に枝折る技術を普及させた。
業界を進化に導いた革命児と言えるでしょう。
「でもね、全てが順風満帆であったわけではなく、昔はずいぶんいじめられたこともあったよ。
某市場に持っていくと、偉そうにしているお兄ちゃんが受け取りもしないで“そこに置くんじゃない!“と言ってきたり。体が小さかったからその分一生懸命やってやろうと思ったね」
山椒は小粒でピリリと辛い^~^!!といったところでしょうか。
「ウン探さんさぁ、知ってる?」
ん??何、ナニ?何をですか??(゚o゚ )( ゚o゚)
「モモの花は糖分が好きなんだよ」
へ~、そうなんですか。
甘くて栄養のあるものが好きなんですね。なんだか誰かの好み似ている・・・?
「モモの花が本来ピンクであるところ、紫色になってしまっていたりするのを見かけると思うんだけど、この現象がブルーイングで、栄養不足だったりするとこうなってしまったりするんだ」
ブルーイング現象を引き起こすと、つぼみも開かなかったり、花もすぐ終わってしまったりします。吉忠さんでは、このブルーイングを避けるために、出荷するモモは全量栄養剤を入れた水で水揚げをします。花き業界ではこのことを「前処理」といいます。
「もちろん出荷物は100%前処理を施すけど、お店やご家庭でも栄養をやってほしいね。市販の栄養剤を使うか、もしくは砂糖を入れてもいいかも。
栄養をやると今度は水中にバクテリアが発生して、水が腐りやすくなるから、一緒に殺菌剤を入れるといいよ。例えば水1リットルに台所漂白剤1滴+砂糖大さじ2-3杯とか。
でも栄養剤として売られている市販のものが一番いいよ。バランス良く配合されているしね」
はい、皆さん!( ^ー゜)b
モモを活ける時にくれぐれもただの水に入れないでくださいね。
吉忠さんからのこれらのメッセージは、生産したご自分だけが満足するのではなく、あくまでも消費者の皆さんに一番満足してもらうためのものです。ですから、皆さんも少しでも長い間きれいなモモをお楽しみいただくために是非栄養剤をご利用ください。忠実にやってみると、モモも長持ちします。
これホント(゚ー゚)(。_。)ウンウン!
せっかくですから枝折りの技術だけでなく、モモの生産についても教えていただきたいのですが・・・と恵一さんにお願いしてご説明いただきました。
吉忠さんのところでは、1株のモモの木から2年に一度、花を切ります。
これが今年切ったもの。丸坊主!
↓すると1年後の翌年にはここまで生長しますが、まだ切らずに我慢する。花が咲いても採花しない。
枝の色が若干明るく、若いことがわかります。
また、1年でここまで大きくなることに驚かされます。
↓そして2年目に強くて立派な枝まで生長するので、ここで出荷用の花を切る。
このナタで、ザクザクッと枝を切り落としていきます。
↓丸坊主のモモの木になる。
というサイクルを繰り返します。
切り落とされた枝はぐるりと巻かれて出荷場まで持って帰り、適切な大きさに束ねられ、先ほどの機械で束ねられて出荷されるわけです。
では、花芽をたくさん付けるために何か特別なことをされたりするのでしょうか。
恵一さん「特にないよ。枝に傷を付けて花芽を増やすという技術もあるみたいだけどね。」
どうして枝を傷つけると花芽が増えるのですか?
「傷つけられると、モモが
“あ!僕死ぬぅ~!”(;≧皿≦)。゜°。ううううぅぅぅ
と生命存続の危機を感じて、“ならばたくさん子孫を残さなければ!”とその分たくさん花を咲かせるんだよ。
でも、基本的には花芽の数は茎の太さで決まってくるからね。茎の太さは水を吸い上げる量に比例するでしょ。たくさん花芽を付けようと思って意図的に何かをしても、水を補給しきれないんだよ。つまりブルーイングになってしまうか、花保ちが悪くなってしまうか・・・。
花数が少ない方が大きくて力強い花が咲くけど、みんなは花がたくさん付いているほうがいいでしょ。だから自然のままがいいんだよ。枝に無理に負担をかける必要はない。それよりも枯れた茎をこまめに剪定してあげることの方が大切。そうすれば風通しも良くなって、病気も防げる。モモは縮葉病(シュクヨウビョウ;葉が縮れて落ちてしまう)などがウメやモモに多い病気なんだ」
なるほど~。フカイッ!
無理な負荷をかけずにモモが持つ自然の力を最大限に引き延ばすのですね。
あれ?ところで1年目の枝は切らないでそのままとっておくっておっしゃっていましたね。
となると、このモモの木にも桃の実がなるのでしょうか?
「小さな実が成るよ。落ちるくらい熟すととても甘くていい香りがするよ」
(よもや(-.-)、前々回のウン探のハボタン同様、恵一さんもモモの実を食べたことがあるのか・・・?)
「食べたことはないんだけどね」
あ、そうでしたか^_^; よかった。
実が小さいので可食部が少ないそうです。品種はあくまでも観賞用なので、モモの実の方は価値がは低いようです。
恵一さんは枝折りの技術も伝承しつつ、枝物に固執することなく時代のニーズに合わせ、他の草花も生産をされている頼もしい後継ぎさんです。
こちらの写真は義一さんが恵一さんに枝折りを伝授しているところの写真です。
三代目から四代目へ技術継承の瞬間です。お二人の笑顔が理想の親子像を物語っています。
そして更に遡って、こちらが吉忠2代目こと吉田一男さん92歳。お話をさせていただいたところ、お言葉もはっきりしていらして、とぉってもお元気です!
最後になんとこちらが初代吉忠こと吉田仲右衛門(ちゅうえもん)さんです。略して“吉忠”のお名前が生まれました。
じゃじゃ~ん!↓↓↓
何とまあ凛々しいお顔立ちをしていらっしゃる。
これらの写真は義一さんが見せてくださいました。
番外編になりますが、義一さんのご自宅はどこかの高級料亭かと思うくらい、大きくて立派で、室内もきれいです!
義一さん御自慢の南天やら松や梅などで床の間が飾られています。これらも昨年の12月28日に飾ったものがまだ元気に咲いているのだとか。早1か月半くらい咲いている計算になりますか・・・。
義一さんの前では「花が持たない」というのは花を飾らない理由になりませんね。ははぁ、参りました。
お部屋の中は賞状やらトロフィーやらでいっぱい!
よく見てみると、森嘉郎とか小泉純一郎とか、どこかで聞いたことのある方のお名前が賞状に入っているではありませんか。
(上の賞状に森元首相、下に小泉元首相のお名前が入っています)
所狭しと飾られた賞状の中の1枚は「農業技術の匠」の証でした。
農林水産大臣から与えられるものですが、平成20年に神奈川県で初めて授与されたのが何を隠そう義一さんで、『ハナモモ等「枝折物」の調整・出荷技術』において“生産性の向上など導入効果が認められる農業技術を開発や改良され~(中略)~地域活性化に貢献することが期待できるものである」として、農業技術の匠であることを証されています。
そして、授与は当時農林水産大臣であった石破さんから。
す・ゴ・い♪ こりゃホンモノだ。
「こういうの(これまでに受け取った数々の賞状)はね、たくさん頂いたし、偉い人の名前も入っているけど、その偉い人も任期6か月とかだったりする場合もあるでしょ。
それよりこれ見てよ、これ、コレ!私にとってはこれが一番だよ(笑)」
といって指差したのはなんと株式会社大田花き代表執行役社長磯村の名が入った「感謝状」。
平成23年1月との日付です。ついこの前!
「あちこちから賞状は頂くけど、市場からの感謝状ってあまりないでしょ。わたしにとってはこれが一番大切だし有難いね」
そのようにおっしゃっていただけて何よりでございますm(_ _)m ありがとうございます。
ところで、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか。モモをはじめとする植物は義一さんにとって何を意味しますか?
「人生の喜びだね!
良くできたときの喜びったらないよ。すごく嬉しいよ。それは市場での値段とは関係なく。
でもやっぱり値段が出ないとがっくりするけど(笑)。“値段は後から付いてくるもの”って生産仲間には言うんだけどね。
良いものを作りたいけど、気候やタイミングでうまくいかない。一生かかっても一人前にはなれないのが生産者。同じことをしていても、毎年毎年結果は異なる。
慣れていても毎年頭を悩まさないと、うまくいかないんだよね。“一生勉強”だよ。世の中は変わっていくから大変」
この辺りの言葉に「吉忠ブランド」を作り上げたヒントが隠されていそうですね。
常に探究心を忘れることなく生き物である植物を手掛けつつ、自分ではコントロールしえない天候や相場と対峙する難しさ。「吉忠」の飽くなき追究があるのです。
義一さん、生まれ変わったら何をしたいと思いますか?
「そうだね、生まれ変わってもまた花の生産をするだろうね。食べるための糧として花の生産をしていても、実は花が好きじゃない人もいるよね。
でも私は盆栽でも植木でも植物を見ると欲しくなってつい買っちゃったりするんだ。結局植物が好きなんだよ」
ここまでおっしゃった義一さんですが、なんと最後にどんでん返し(!)が。
花やら盆栽やらあらゆる植物をこよなく愛していらっしゃる義一さんですが、花関係の賞状と一緒に並ぶトロフィーたち。何のトロフィーだと思いますか。なんでも植物より好きなものなのだそうで・・・。
何と答えは↓・・・
「闘犬!!」
(ワンワン!)
とッ、闘犬??
「そうそう、闘犬。16歳のころから好きだから、植物よりキャリアが長いんだ。もう50年だね(笑)。」
ははぁ~、そのようなご趣味をお持ちだったのですね。犬と植物との共通点は何かありますか?
「何もないよ」(^-^)(サバサバッ!)
う~ん、そうですか。それにしてもどうして闘犬なのでしょう??
「そうだねー、普通の犬の(見た目の)品評会はお金持ちとか権力のある人が勝つってことがよくあるでしょ。お金があればよく訓練することもできるし、審査員に知り合いとかがいれば、口利きで審査が有利になることもある。
でも闘犬は大臣も政治家もお金持ちも、例え16歳の子どもでも土俵の上で勝負するには全く公平で正直な結果になるよね。嘘やごまかしはきかん。八百長なし!」
あ、そうですね、八百長、某業界では今問題になっていますが・・・。
「犬は“誰かに義理があるから負けてやってくれ”っていっても負けてくれないでしょ。面倒さえ見てやれば主人のために一生懸命頑張ってくれるんだよ。愛情を持って世話をすれば飼い主に貢献してくれるんだよね。
そういう意味では花と同じなんだね。私はそういう正直なものが好きなのかもしれない」
このようなところに義一さんの人となりが表れていますね。
そして出していただきました優勝旗!お手数をおかけしてすみません(゚ー゚;Aアセアセ
本年の1月23日に行われた大会で優勝されたそうです。ホントつい先日のこと。
じゃじゃん!
持ち回りの優勝旗です。あ!ありました。吉田義一さんのお名前!
一番前に出して、写真を撮らせてくださいッ!
パシャ!
「名前だったら他にもあるんじゃないかな。前にも優勝したことあるから。」
え?ホントですか?ではそれも合わせて2枚で写真を撮らせて下さいッ!
パシャ!
あれ??義一さん、ほかにも吉田さんのお名前がありますよ。出てくる、出てくる。
「あ、ホントだ」
って、え?忘れる??忘れてしまうくらい優勝が当たり前になっているのですか?強いですねー!!
もうこの際、全部まとめて撮らせてもらってしまえぃ!
パシャ!
極める人は何でも極めてしまうのでしょう。
【吉忠さんの格言】
・ モモの枝折り(しおり)の技術は芸術。国も認めた匠の技也!
・ モモ(植物)は生きている。呼吸して生長するものなり。
コンディションを細かく観察し、環境作りに心を配るべし。
・ 教えてもらったことをれたことをそのまま実践することなかれ。
常に疑問符を打ち、更に良い方法を編み出すべし!是、進化への道也。
・ 出荷物には100%前処理を施すべし!モモちゃんは糖分が大好き
・ 植物は正直者。手間と愛情をかけただけ良いものが出来上がる。
時間を使い、生育環境に気を遣い、頭を使い、手を使い、足を使い、愛情を注ぐべし!
【消費者の皆様、およびお花屋さんへひとこと】
・ くどいようですが、モモは糖分が好き
採花後は、出荷前もお店でもご家庭でも、糖分の入った水で栄養補給してくださいな。
・ モモは糖分が好きで、寒さが苦手。冷気や風に当てないようにしてくださいませ。エアコンもNGでございます。
【良いモモの選び方】
・ 枝折りになっているものについては、下よりも上の方が膨らんでいるもの。
・ ツボミが緩んで、きれいに色付いているもの。ここまで咲いていれば完全に咲きます。
但し、ブルーイングに侵されているものは選ぶべからず。
・ 黒い枝より飴色の奇麗な枝を選ぶべし。そして枝の肌もきれいなもの♪
それが枝が若くて元気な証拠です。
<写真・文責:ikuko naito@花研>
2009年3月10日
vol.70 和歌山県 森林工房 大江(コウヤマキ)
ウン探、一路南紀白浜へ!
都会の喧騒を離れ、羽田からわずか1時間15分で美しい白浜に降り立ちました。
今回ウンチク探検隊が潜入したのは、和歌山県の龍神村。
飛行機で南紀白浜空港で降りて、車を走らせること約2時間。
ここは、まるで国内にある外国のような感じさえ覚えます。
天空の村とでも言いましょうか、なんとも神秘的な雰囲気が漂っています。
「龍神」という名前だけに、あちこちに龍のモニュメントが・・・
そんな龍の神が降臨していそうな村からコウヤマキをご出荷されているのは
「森林工房大江」の大江英樹さんです。
お若い!?(゜◇゜;)
この写真で皆様の想像をガラリと変えたのでは?
大江英樹さんはこの龍神の林業の有望な担い手の一人。
そう、森林工房大江さんは本来、植林→伐木→搬出までを行う木材屋さん(林業)なのです。
このたびはコウヤマキで、大消費地関東の花きマーケットで挑戦したい!とのご意向から
弊社へのご出荷を始めていただきました。
はい!大江さんの山に潜入する前に、ここでコウヤマキの予習をいたしましょう!
皆さん、そもそも「コウヤマキ」ってご存知ですか?( ^ー゜)b
「高野槙」と書きます。関西では日常の家庭花として当たり前のように使われていますが、
関東ではまだまだその名を知る人は多くないはずです。
■なぜ関西と関東でこのような差があるのでしょう?
コウヤマキはもともと高野山に多く自生しており、生長に適した環境である高野山で植林・栽培が盛んとなったことから「コウヤマキ(高野槙)」と呼ばれるようになりました。
高野山が発祥の地だけあって、だからこそ関西では日常的に使われてきました。
■コウヤマキの素敵な特徴について、何かご存知なコトはありますか?
・ 日本固有の常緑針葉樹で、世界三大美木のひとつとされる。(他の2つはヒマラヤシダの南洋杉。)
・ 病害虫に強く、無農薬、寿命も長く、悠久の時代を生きる霊樹とも言われる。
・ 2006年9月6日に御誕生になった秋篠宮悠仁親王殿下の御印の木にされている。これには「コウヤマキのように大きくまっすぐに育って欲しい」という思いが込められている。
・ 緑色がきれいで、葉が落ちにくく、切りでも大変長持ち!。
・ 清涼感あふれる心地よい香りがする。
・ 弘法大師空海が高野山で最も長持ちする花を探していたら、高野槙に辿り着き、今でも関西地方では暑い夏でも長持ちするアイテムとして重宝されている。
・ もともと空海が供花として使用したことから、しばしば仏様に手向けられることがあるが、
高野槇1本で60種類もの花を供えたことに匹敵するともいわれている。
・ コウヤマキは成長が遅い反面、繊維密度が極めて細かく、抗菌性・耐水性があるため、桶、風呂、船、橋、建築材料など高級木材として使用されている。
・ 一年中、美しい光沢のある緑色の葉を付け、心地よい香りを漂わせ、葉が落ちにくいので、装飾の周りを汚すことなくお楽しみ頂ける。
・ 日本固有種で、古事記や日本書紀には日本で最初に生まれた樹木として「スギ・ヒノキ・サカキ」と並び、コウヤマキも紹介されている。
コウヤマキはこのような無二の特徴を持つ、素晴らしい樹木なのです。
数々のストーリーを持つスピリチュアルプランツとも言えるコウヤマキが、遂に世界遺産指定地域の一角である和歌山県龍神村から出荷されるようになったのです!
では、どんな風に育っているのか?
ここでコウヤマキに関してプロ並みに知識を習得された皆さんにだけ、教えちゃいます!
大江さんが所有される山へいざ出陣!
大江さんは龍神村内に代々受け継いだ約100ヘクタール(=1,000,000?、なんと東京ドーム約25個分!?(゜◇゜;) )にもわたる山をお持ちでいらっしゃいます。
道なき道(もともと道がないところに大江さんが道を作った)を四駆のジムニーで猛進!
この辺はまだ山のほんの入口。
体感角度が45度くらいのところも、大江さんの運転技術とジムニーがあれば余裕でクリアできてしまうんですね。すごっ!
すぐ横は谷底(汗)!
ぐわんぐわんに揺れるジムニー!
うわっ!なんか落ちてきたし!(゚o゚ ;)(; ゚o゚)
今度はシダが襲ってくる???!
いかなる障害も大江さんはなんのその、
まるで自分のお庭を走り回るかのように
優雅にバックで驀進中!
ああ???、落ちるぅ??(゜◇゜;) 。
「あ、こんな山奥に男の子がいる!(驚)」?(゜◇゜;) と、人影を見たような気がしたら、なんと男の子ではなく鹿でした。
「本ジカですね。男の子がいたら、逆にびっくりしますよ!」と大江さん。
確かにそうですな。さすがの余裕です( ^ー゜)b
さらに山奥に分け入れば、熊が出ることもあるのだとか。
大江さん、気をつけてくださいね?!
いずれにしても、こんな体験はまさにあたしの人生のうち最初で最後か。
ぼこぼこがたがたの山道をバックで上ったり下がったり、都会の生活にどっぷり漬かり、自然体験に飢えていたあたしは、この上ないアドベンチャラスな探検にやや興奮気味。ニンマリが止まらない^_^;
ちょっとしたテーマパークよりはるかに面白くて価値ある体験でした。
こんなアドベンチャラスな山道の行く末に見たものは、コウヤマキの植林地帯と龍神の山からの見事な一望の景色。
壮大な景色の次にふと下を向けば、もみの木や松、ヒイラギなどの赤ちゃんがたくさん生えていました。
もみの木 松
ヒイラギ アセボ
大江さん:「こういうのはね、自然に生えてくるんですよ。
私たちは特に種を播いたりしているわけではありませんし、何もしていません。
山が豊かであれば何もしなくても次々生命が誕生し、更に豊かになります。
私の仕事は山を作ることと認識しています。」
大江さんのこの豊かな山で、コウヤマキを作っていらっしゃいますが、あえて平らなところを選び、上へ上へ伸びていくコウヤマキを低木に仕立てていらっしゃいます。
その理由は・・・
傾斜が急なところは作業が大変な上に、梯子を使わないと手が届かない部分も多いので、天候不順のときは、たちまち切れなくなってしまいます。
傾斜の緩いところに植えると・・・
* 低木に仕立てて、梯子を使わずに採取できるようにし、作業効率をアップ!
* 梯子を使わないから、雨の日でも出荷準備できる!
というメリットがあるからです。
NOTE
コウヤマキはとても生長の遅い樹木です。
ひとつの節(約10cm)が育つのに、およそ1年!
実生から膝丈まで生長(約30?40cm)するのも10年かかる代物なんです。
30?40cmになったところで定植。
定植してから商品として枝を採取できるようになるまで、一体更に何年かかると思いますか、皆さん?
なんと10年です。
つまりコウヤマキは実生から出荷できるようになるまで、
10年+10年=20年
20年もかかるわけです!
コウヤマキの天敵って何でしょう?
大江さん:
「ヒョウです。(「豹」ではありません、さすがに^_^; 「雹」です。“ヒョウやアラレ”の雹です。)
新芽の立つ初夏にヒョウが降りやすいのですが、マカロニのように白くて柔らかい新芽にヒョウが当たると、新芽が台無しになり葉が飛んでしまいます。これをリカバーするにはおよそ3年かかります!
つまり、一度ヒョウが降ると、3年は商品にならないわけです。」
んん?、なんとも手強い天敵!
質の良いコウヤマキの見分け方は?
大江さん:
簡単に見分ける方法は2つあります。
?←この2本のコウヤマキを比べてください。
どちらを使ってみたいと思いますか?
恐らくこれをご覧になって、皆さん(写真の)左側の方がいいと思われるのではないでしょうか?
同じ長さで左は4本枝分かれしていて、右は2本しかありませんね。
コレは恐らく品種の問題なのですが、間隔が狭くて締まったコウヤマキの方が良いものといえるでしょう。
?生長のときに通気性が悪いと、葉の裏が黒くなることがあります。このことを私たちは「ススが付く」と言ったりするんですが、ススが付かないようにするためにも、剪定をこまめにして、通気をよくしてあげます。
すると、葉の裏の色の“白と緑のコントラスト”が美しく出るんですね。
コウヤマキの葉は2葉が癒着して1つの針葉状になったもので、葉の裏の中央部のくぼみは白い気孔帯となっています。
おおぉ?、なんだかひとつお利口さんになった気分♪
コウヤマキを選ぶときには必ず葉の裏側もチェックしてください!
森林工房大江さんのコウヤマキの特徴は、龍神の太陽をたっぷりと浴び、葉の関節が詰まっていて、すこぶる良質であるということです!
また、冬は休眠に入るため、葉の色が赤茶けますが、これは針葉樹の特徴です。
写真はまさに冬の色ですが、春・夏には艶々として鮮やかなグリーンのコウヤマキに戻ります。
1年のうち、1本でまさに二味お楽しみいただけるわけです。
この少しくすんだニュアンスの色がお好みという方もいらっしゃいますし、夏場のみずみずしい緑のマキがお好きという方もいらっしゃいます。
冬場も緑色でお使いいただきたい場合は、空調の利いた暖かい所に置いておくと、徐々に緑色を回復いたします。
いずれにしても、コウヤマキは代品など到底思い浮かばない、花マーケットでは無二の貴重な商材なのです。
「あ、使ってみたい!」と思ったそこのあ・な・た♪( ^ー゜)b
関東ではまだまだ普及段階の今、どのように使うかはあなた次第!
↑<コウヤマキを使った或るアレンジの風景>
あなたの創造性をフルに発揮して、素敵な作品ができたときには
是非ともあたくしに自慢してくださいませ(*^-^*)
こちらが和歌山名物目張寿司(めはりずし)とさんま寿司です。
目張寿司は他の県にもあるので有名かもしれませんが、なぜ「目張り」というかご存知ですか?
それは、頂くときにおいしくて「目を張りながら」あんぐりと口を開けるからです
こちらが、同じく和歌山名物「茶粥」↓です。
写真は大江さんのご両親です。
お母様がこれらのおいしい和歌山名物を作ってくださったんですよ
お父様曰く、
「地域の格差社会を感じる昨今です。
生活の洋風化により木材の売れ行きが思わしくありません。
山村はみるみる疲弊していきます。
龍神ではコウヤマキだけでなく、国産のサカキを国内に流通すべく今プロジェクトを立ち上げています。
龍神は雨が多く多湿の上に、寒さが厳しいのでサカキでも葉が締まった良質のものができます。
この強みを生かして、日本の皆さんには国産のサカキを見直してもらいたい。
日本の神様には日本産の植物を以って敬って欲しいですね。」
■山を育てるのが仕事也!
自然を生かしながら山を育てることがつまりは木を育て、次の世代につながる花を咲かせることになる。
林業は全ての自然の力を活かした、複合林産業と心得るべし。
・・・謙虚に、且つ淡々と話す大江さんでしたが、なんとも壮大な話です^?^!
■山とどう向き合うかを考えるべし!
ただの資産としてではなく、やりがいを持って山を作っていく。
心を豊かに持ち、収益が全てではなく、全体のエネルギーやおもしろさを考えれば、ミニマムの収入の中でもこの人生にありがとうと思える。
すべてはこの環境、この自然の恵み。
■コウヤマキの仕立ては作業効率を考えて行うべし!
こまめに剪定を施し、通気性を良くして品質向上を図る!
■コウヤマキの品質の見分け方は、以下の点に留意すべし!
? 節と節の間隔が狭く、よく詰まっているもの。
? 葉の裏の色のコントラストが、よりクリアなもの。
消費者の皆さんへメッセージ
・ 龍神の霊気に包まれて、また大江さんが手塩にかけて育てたコウヤマキを一度使ってみてください!
・ 葉が小さく繊細に揃った上品なアセボとスーパーローングヒカゲ(1m以上!)を見つけてきました。
国産の肉厚良質サカキや黄金ヒバもございますので、こちらも合わせて大江さんの商品を是非ともお試しください。
←大江さんの黄金ヒバ
お問い合わせは大田花きまで(TEL 03?3799?5000)
P.S. 龍神村には知る人ぞ知る龍神温泉があります
日本三大美人湯のひとつで、「龍神」の名は、この龍神温泉に由来しているそうです。
どのような成分が働いているのか、お湯は透明でありながら、とろぉ?っとしているんですね(*^-^*)
滑らかなお湯でホント気持ちいいぃ?!!!
帰りにちょっと立ち寄ったときには、周りに人気もなく、なんとその龍神の湯を独り占め
ま、いまさら美人の湯に入る必要もないんだけどね( ^ー゜)b ・・・いや、あるか。
もっと龍神温泉について知りたい方はコチラ
◆PHOTO GALLERY◆
←打ち上げられた魚ちゃんたち。
アタシが並べたわけではありません。
白浜から龍神に行く途中に見かけた「奇絶峡」(きぜつきょう)
下を流れる川には、直径10メートルくらいの岩がごろごろしています!
どうしてこんなに大きな岩ばかりあるのか、それこそ奇絶峡なだけに、気絶しそうなくらい大きい岩たちです!
白浜のみどころ:千畳敷と三段壁
お・し・ま・い
<写真・文責:ikuko naito@R&D>