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2005年2月 4日

Vol.1 神奈川県平塚市 浜田バラ園 編

第一回目からバラへの情熱を語り出すと止まらないウンチク大王浜田ご兄弟へ突撃です!
しかしすごいのはその言葉通りの日本一の品質のバラを作っているということ。まさしく有言実行なご兄弟であります。

大田市場から車で1時間半、首都高速の渋滞を抜け、厚木インターを下りると「ベルマーレ平塚へようこそ!」の看板が。(ちなみにチームは平成11年に「湘南ベルマーレ」に改名しています。念のため。)

サッカーチームの取材に来たような錯覚にとらわれつつ、しばらく進んだ先に浜田バラ園はあります。

あぁ富士山がきれい…とみとれる間もなく、さっそく圃場見学させていただきました!

主にご案内と解説をしていただいたのは浜田(弟)氏です。

温室は年季の入った感じ。天井の開閉は手動です。温室の中に一歩入るとバラたちが天を目指して上に上に高く伸びています。

(こんな風に見上げる感じ。高い!)
切り上げ式という方法で栽培しているので、どんどん高くなるんだそう。

天井が低めなのは、意外なことに元々カーネーション用の温室として作られた温室だから。最初は菊栽培からはじめてそれから1年ほどカーネーション。

最初からバラじゃなかったんですね。

なぜバラを?という問いには「当時近くにバラを作っている人がいて、ラクでもうかっていたから」。

・・・偉大な歴史が始まるきっかけって意外にこんなもんなんです。

土へのこだわりがとまらない

浜田バラ園最大の特徴は土耕栽培。

ロックウール栽培が主流になりつつある今、浜田バラ園は土耕にこだわり続けています。
「完璧なバラを100点とすると、土耕は90?95点のものができる。土が持っている自然の力が最終的にバラの能力を引きだすんだね。香りも違う。マレーラもうちのは香りが強いよ。ただ土耕は失敗すれば30点のものができちゃうリスクはあるし、本数が切れない。太いの切れば切るほど数が切れない。
うちなんかみたいに同じように作れば土耕でもいいけど、すごい能力がいるわけよ。」

このものすごい自信の裏には長年試行錯誤した土作りへのこだわりと成功があるようです。よく見ると、表土近くにピートモスやEM菌など有機物を混ぜてあり、表面には敷きわらを敷いてあります。

(これがEM菌の入ったボカシ。ちなみにEMとはEffective Microorganisms(有用微生群)という意味です。)

ピートモスを混ぜているのは土中の酸素を多くするため。

土に酸素が多いと根張りがよいのはなんとなく分かりますが、ナゼ表土近くに?
「生ゴミとか集めておくはきだめってあるでしょ。そこに捨てたカボチャやらキュウリの種から山の表層のところに白くて素晴らしい根っこが生えているんだよね。
なるほど、これと同じ環境を作ればいいんだなって思ったわけ。有機物を土の上に置くと早く湿気るからよく吸収される。
そうすると一年中酸素がいっぱいあるところに根っこがあることになるの。よく土壌は深く掘らなきゃって言われてたけど、学者の理論が間違っていたんだ。ミミズがすごく繁殖するのよ。ほら!」

(最高級のバラとともに生きるフトミミズちゃん)

と、浜田(兄)氏がちょっと表面を掘っただけでにょろにょろフトミミズちゃん登場です。これにはビックリ!

「ミミズの糞はいろんなアミノ酸が入ってる。うちのバラはアミノ酸を食べているんだよね。だから色がよくて、花が開くときに力強い。」

「地鶏」をつくる

確かにこだわりの土からできた浜田バラ園のバラは力強さがウリです。でもそれは具体的に何がどう違うのか…?

「ブロイラーなのか、地鶏なのかの違い。うちのは地鶏だね。」
はぁ、バラなのに地鶏ですか。

「ブロイラーなんかすぐ殺せば肉になるけど、長い距離を輸送したりするとやっぱ死んじゃうもんも多くなってくるでしょ。うちは地鶏みたいに体力のある、マラソン選手みたいなバラを作ってるわけよ。」
なるほど。力があるってことはお客さんの手元に行っても力が残っててきれいに咲いてくれるってことですね。

「うちのばらはトゲが痛いでしょ。」 ほんとトゲ痛いです!(即答)

浜田氏のバラは新聞紙に包まれバケツに入って出荷されていますが、トゲが新聞紙を貫通してますから!
軍手をしているのに何度刺されたことか・・・。しかしトゲの硬さと力強さとの関係は?
「ちょっと農業の話をすると、チッソ・リンサン・カリってあるでしょ。チッソは体、リンサンは色艶をよくする、
カリは骨格をしっかり作る。トゲの硬さを作るはリンサンとカリなの。これが多いといい咲き方をするんだよ。
だからトゲがいたくないバラはすぐベントネックしちゃう。
あと茎をつぶしてもらえばわかるけどうちのは茎も硬いよ。

ブロイラー(茎が柔らかいバラ)は100円ケーキみたいに膨らましてるだけ。
形成層が薄くて茎がつぶれるということは水揚げも悪い。でもリンサン・カリをやると長さが伸びにくくなる。
長さが伸びないと市場では安くなるから、今はステムだけ長いバラが多いね。しっかりしてるのに伸びるバラを作るのは技術がいるわけよ。」

写真家も惚れた銀座の女のようなバラ

「うちのバラは1本でも見れるバラを作ってる。

それとバラの良し悪しは茎の太い細いじゃないよ。うちのは太くないけどスラーっとしてる。
細すぎず太すぎず下から上までのステムの差がほとんどなくてピンとしたバラがいい。
銀座の柳みたいに風が吹いても揺らしてもゆれるけどピンとする、
銀座の女のようなバラが理想なの。」

(揺らしてもピン! の実演中)実際にバラを持ってゆらゆら。スラーッ、ピン!
なるほど?!夜の激戦区銀座でしなやかにしたたかに生きる「黒革の手帳」的?なバラですね。
「それと蕾の大きいのがいいっていうでしょみんな。でも上が大きいってことは上に伸ばしてるってことなのね。
チッソが多いと上に伸びるけど横幅がなくなる。ってことはガクのところは細くなる。細くなるってことは倒れるように開いちゃう。
うちのバラは蕾は小さい、でも横に幅があるしコシもあるからゆっくりちゃんと開くでしょ。
うちの3L4Lってのは長さだけじゃないんだよね。幅もあるから長いものほど花も立派だし、よくもつんだ。」

そうなんです!浜田氏のバラはつぼみの大きさの予想に反して大きく、そしてゆっくり開きます。

ミカドの立派なものになると花が20センチにもなります。ヘタな巨大輪種より迫力あるかも!

「大きく開くだけじゃないよ。うちのバラは外側から開いていって真ん中がググーッとあがって咲く。
この凹凸が大きいと花の表情が豊かになる。これがバラのほんとの姿なんだよね。おれは、バラは動く芸術だと思っているから。
そういうきれいな表情をいかに保つように作るか、ということだね。」

この表情の豊かさが、かの著名な写真家秋山庄太郎氏が惚れこみ、浜田バラ園に通われた理由でもあります。

写真集「薔薇よ!」の表紙はしっかり浜田氏のバラたちが飾っています。たくさんの美人女優たちを撮ってきた秋山氏が、浜田氏の薔薇を「色気がある」と評したそうです。
 (注:簡単に秋山氏をご紹介しますと、原節子(すいません、ワタクシ顔分かりません)や夏目雅子など、有名女優のポートレートを多く手がけたと共に花を撮り続けた写真家としても有名な方なのです。)

「うちのバラは、光線が当たったときに光線を跳ね返すツヤがある。
人間の何千年っていう歴史の中で美人の基準が変わってないのは肌だけだよ。スタイルとかあとは変わってるでしょ。
昔から永遠にもち肌は美人。いかにしたら肌のきれいなのができるのか。バラを作るって「美の探究」だから。」

消費者を考えたバラ作りの哲学

事務所に戻っても浜田節は続きます! 「一つのバラの中にいかに要素を入れるかってことがプロの仕事だから。 花の色がいい、水揚げがいい、開いてから持つ、バランスがいい、いかにその要素を入れるかなの。うちのバラは、品種的にあまりもたないって言われてるのを作ってる。 よそから比べれば蕾は小ぶりだし開きのアシは速い。

だけどもよく開いてる、色もいいしよく持つねって言われるね。

でも最近は「バラはもたない」って思われちゃってるでしょ。仲卸の社長とたまに銀座のクラブに行くけど、ああいうところの女の子はいい花もらってるんだけど、それでもバラはすぐダメになっちゃう、って話になっちゃうのよ。

おれは自信があるの。でも自己満足で終わるんじゃなくて相手の人が喜んでくれることをするってことが大事。

生き物だから悪いものは絶対できちゃう。だから知ってる店に持っていった時なんかは後で「どうだった?」って聞いてる。
1週間は持つのが3日で終わっちゃった、って言われたらどうしてか、って考えるもんね。」

でも実際は暖房がガンガンかかってるような、花にとってはサイアクな所に置かれちゃってることもあるのでは?

「それでも俺は肥料とかの関係で柔らかくできちゃったかなって考えるわけ。消費者がいい、って思うものをプロは作らなきゃいけない。」

一流の感性

「一流のものを見ないと一流のものは作れない。バラを作るって感性なの。

セーターはカシミヤが一番、セーターなんかめったに買わないけど買うときはカシミヤを買うもんね。それとおれはなぜヴィトンとかエルメスがいいのかをいつも考えてる。
時計なんかも千円からあるけど、なぜローレックスがいいのか、とかね。
ところでなんでヴィトンがいいか知ってる?」

エッ・・・。(ワタクシ悲しいことに大田では珍しく?ヴィトン未所持であります。だっ、誰か買って・・・)

パーツごとに専門の職人さんがついてしっかりした品質のものを作ってるからでしょうか?

「そうなんだよ。いいもんって職人が作るわけだな。生モノだと、例えばワインだとブドウや畑の力を引き出すのが職人の仕事。その人の感性が味に出てくる。

人間が作ったり手をかけるってことは自分の分身を作るってことと一緒だと思う。

自分をそれに表現していくってことだから。それはバラの生産者にも言える。そしてこういう職人の美意識が分からない花屋にはうちのバラのよさは分からないね。」

歴史が示す最高級の品質

ふと事務所の上を見上げてみますと、賞状がずらずらーっと並んでいます。

「関東東海花の展覧会ってあるんだけど、親父の代から数えてうちは全部で大臣賞を6回出してるよ。
昔は今と違って土耕ばっかりだからこの頃はレベルが高いわけよ。だからこれだけ大臣賞とってたんだからすごいわけ。いいものを一年二年作るのは易しいの。トップをとってそれを維持するのが大変。
土耕で安定生産できる技術を作ってきた。その集大成が今の浜田バラ園だから。

技術的には日本のバラはトップ。だって環境で作っちゃってるコロンビアなんかとは違うでしょ。その中でのトップなんだから、うちのバラって世界一だよ。

大田でも、うちんとこのバラを世界一のバラだって言ってくれる人がいるけど、なんで世界一のバラをあんな値段で売るかな?って思うわけ。」
はっ・・・す、すいませんっ。末永く世界一のバラを作り続けてください!市場も今以上にがんばりますから!!


浜田氏の語りは聞きしに勝る辛口ウンチクでしたが、バラへの情熱がガッチリ伝わってきました。
帰り際には探検隊の私達にしっかりお土産のバラまで持たせて下さいました。ほんとうにありがとうございました!!

浜田バラ園の格言

・土耕栽培で地鶏のような最高級品のバラを作る!
・「銀座の女」のようなバラが理想!もち肌!
・美の探求と一流へのこだわりをとことん追う!

お花屋さんへの一言・・・

・ほんとうのバラがどんなものか、うちのバラで勉強するべし!

浜田バラ園から出荷されているバラたち

ローテローゼ、ブライダルピンク、ブライダルホワイト、マダム、ヴィオレ、ブラックティー、ダーリン、マレーラ、ミカド、ババメイアン、アンティークレース・・・などなど
(文責 よしだゆきえ)
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